新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス 公演情報 NICE STALKER「新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    表層的には面白い。未見の演目のため、もともと どのような世界観なのか分からない。ただ令和の時代にあった言語感覚で「観やすい」古典として再構築という目的は達せられたかも知れない。
    物語の端々に 当時の権威と尊厳の象徴であろう教会の失墜が見て取れる。その意味で、原作の世界観はもっと皮肉に満ちたものではないかと思ってしまう。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    ほぼ素舞台。1カ所に乱雑に置かれたジャバラパイプ、壁に黄色のラテン十字が斜めに塗られている。天井から色付裸電球が吊されているだけ。ラストは、傾いたラテン十字に照明が照らされ輝いて見えるのだが…。

    物語は、ジョヴァンニ(兄)が神父に妹を愛してしまったことを告白したところから始まる。いったんは諦めるように説得するが、最後には妹アナベラとの恋を認めるような素振り。そして二人に情交の結果…。その結果に対する神父の後始末(対応)アドバイスが更なる悲劇を招く。悲劇の結末には枢機卿も為す術がない。教会…神父の導きによって愛情劇が愛憎劇へ変質?してしまう。そこに権威や既成の価値(芸術)の失墜、それに対する抵抗や失望が透けて見えた。ここが「ワークインプログレス」へのコメント。先読みすれば、現代日本との関係なんかが出てくるのか?
    公演では、まずは物語性を意識したような観せ方だ。確かに現代でも衝撃(話題)性のある「近親相姦」という禁忌を犯した兄妹の恋愛を軸に展開する。「妹萌え」であり「兄恋慕」といった相思相愛、その面白場面を切り取りコンパクトにまとめ上げ、敢えてコメディタッチで面白可笑しく観せているようだ。

    舞台回しであり神父、さらにアナベラの乳母・プターナ役を演じる東京ドム子さんが巧く立ち回る。彼女曰く、原作をそのまま上演すれば3時間半のところ、本公演では割愛をして分り易くしているという。用語や当時(1630年頃)の状況については、プロジェクターで補足説明する。さらに本番中にダメ出しを演出家に求めるなど、あの手この手で観客の関心を惹きつける。

    台詞は、令和の時代感覚(翻訳・構成・演出)のイトウシンタロウ氏、一方 その対比として紹介されたのが小田島雄志氏の訳。劇中では、「身の上」か「身の下」かといった上品か下品(身振りを加え)といった括りであったが、「全編上演」時にはどうなるのか。ちなみに次回公演は「ロリコンとうさん」(2023年8月)らしいので、全編上演はまだ先のようだ。
    次回公演、そして本公演の全編上演、どちらも楽しみにしております。

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    2022/09/23 22:27

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