三年前のリフレイン 公演情報 劇団東京座「三年前のリフレイン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★


     総ての壁面を黒いクロスで蔽い側壁の幕のみスリットを設けて出捌けとしており、舞台上のセットは場転に応じて入れ替える。普通のタイムスリップ物と観るか、心理劇と観るかで評価も変わってこようが演出が頂けない。

    ネタバレBOX

     またタイムスリップ物の常として一般相対性理論と特殊相体性理論が関わってこようが特殊相対性理論で光速は限界速度とされていたことを考えれば光を越えるスピードでリフレイン効果を用いる時の馬場のスピード表現がエスカレートする場面(光速を越える)が何度も現れる、仮に光速度を超えるスピードが発見されるなることがあるにしても、或は単に自分の勉強不足で相対性理論からそれが演繹し得るにせよ、簡単な説明を何処かに挿入しておいた方が親切であろう。
     心理劇として観る場合、馬場がずっと苛められていたことが先ず重要である。只でさえ日本人はおいてけぼりを喰ってノケモノにされることに対する異常な恐怖感があるようだ。現在日本中で起こっている陰湿な苛めにもこの無視即ち仲間外しはその重大な要素であることに異論はあるまい。暴力を振るわれる、金を脅し取られる、悪口を言われる等々の具体的苛めの根底に無視して良い人間(即ち非社会的人間は人に非ず)を苛める側は基本的前提としているからこそ、先ず、虐められ宇人間を無視することから始め、それが苛める側の勝手な認識に於いて完成するや否や、自らは一切の痛痒も感じることなく陰惨・残酷・非人間的行為を苛められる者に対して為し得るのだとすれば、子供の頃の馬場が単純に強くなって自ら力によって対抗したいと考えてボクシングを始めた訳ではなく、単に偶然ボクシング事務所代表に拾われた結果ボクシングを始めている点、リフレイン効果も馬場にとっては偶然身に付いた能力であり、主体性が全く無い。即ち主人公として脚本自体が先ず怪しい。このマヤカシを何とかする為に持ち出されたのが承認欲求という孤絶させられた者が発する妄念である。彼を「恋する」西内の愛が偽物であることも、陰謀論的な展開の必然性も以上の理由から出来する。他にもボクシング事務所トップの金山の表現が極めてわざとらしいエスカレーションに終始することも納得がゆく。
     まあ、金山が馬場のスポンサー・松本(実は某陰謀組織のメンバー、因みに西山も)との論戦で述べる論はそれなりにユニークで面白いが、作品全体の中で有機的に結合して居ない為、物語に必然的に要請される要素となっていない点で難がある)
     他にもボクシングをTV等を通してでも見て居る観客からみれば、岩井がパンチング機材を使う時に猫パンチを出すようなことは在り得ない他、リングポストの配置、ロープの数、張り方等全くリアリティーの無い練習風景も白けさせる。
     本質が問えず、陰謀論的なモノを持ち出すことによって茶を濁す行為が、社会が政治に信頼を置けぬという単純な事実を表すとしたら、確かに民衆のそのような不審を表現しているのかも知れない。然し、このような状況を徹底的に事実に基づいて集積しキチンと分析、それらの作業から得られたデータを基に考え抜かれた果てに作品化するのでなければ碌な作品にはなるまい。

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    2022/09/19 14:17

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