アワード 公演情報 ZIPANGU Stage「アワード」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    そつなくまとまって
    もっぱらサンモールスタジオの方での観劇が多く、シアターサンモール
    に入ったのは初めて。なかなか良い劇場ですね。本作の雰囲気とも
    合っていました。パンフレットの配役表に目を通すと、登場人物全員が
    小説家の苗字。文学賞物だからと言えばそうだけれど、作家の役以外は
    普通の苗字でもよかったのでは。文学にこだわりたいなら、作家以外は小説の題名にちなむ姓にすればよいのに、なんて考えていました。というのも、
    文学賞物の小説「大いなる助走」は、登場人物も実在作家をデフォルメしたような性格づけになっているから名前の酷似も面白かったが、この芝居は文壇をそこまで活写した作品ではないからだ。
    コメディーとしては大きな欠点もなく、いちおう文学についても語られているし、
    面白かったです。でも、あまり感情移入できなかったので☆4つ。

    ネタバレBOX

    まず、舞台美術が地方の安ホテルのロビーみたいで、栄えある文学賞の会場に見えなかったのが残念。予算というよりセンスの問題かと。「何事にも負けない犠牲的」なホテルのベルボーイ・宮沢寛治、「ニヒルな」編集者・芥川龍太郎、「無頼漢を気取る」坂口せいご(正誤の字を当てるのかしら)、「ベッドに関係ある」浜田詠美といったところが、小説家本人と共通点を匂わせる人物かも(小説家の役でない人物もいるが)。編集者の武者小路実光(長野耕士)は役としては面白いが、なぜ武者小路なんだろう、刑事の武島有雄(古川健)はなぜこの名前?本家の有島武郎は二枚目俳優森雅之の実父で森をしのぐ美男作家なのに、どこも共通点がない!なんてどうでもよいことが気になってしまった。坂口せいごは、ストーリー展開上、名前を明かせないので、配役には「流れ雲」になっていて、これはせいごの祖母林文江(林芙美子のもじり)の「浮雲」をパロッたのだろうか。
    宮沢のキム木村は田山涼成、坂口の新田正継は佐々木蔵之介、太宰勉の日澤雄介は陣内孝則みたいな演技だなーと思って観ていた。浜田詠美の宮本ゆるみはコントをやっていたころの山田邦子そっくりの声色を出していた。
    太宰勉の候補作品は「走れ!失格」というらしく、アメンボウのように細長い足を高く跳ね上げて始終走っていて、「こち亀」に出てくる白鳥麗次のようにプライドが高く軽薄な男。チョコレートケーキという劇団に以前から興味を持っていたが、役者としての日澤氏を観たのはこれが初めて。なかなか面白い役者なので、チョコレートケーキの公演を観てみたいと思う。
    夏目颯太(この読みは、「そうた」でなく「さった」では?)と与謝野秋菜の場面だけ、ピンクの照明になって新派みたいに古風な純情芝居になるのがあざといが可笑しかった。しかし、夏目という男が文学に対しても信念が感じられず、女性に対する態度も煮え切らなくて、主人公としてあまり共感できず、魅力が感じられなかった。坂口の候補作が「大いなる滑走」で受賞のための枕営業の話が出てくるあたり、やはり筒井康隆の「大いなる助走」も意識したふしがある。で、どうしても比べてしまうと、ストーリー展開が見劣りするのは否めない。どんでん返しもひねりも定石どおりで平凡な後味。自分の場合、思い出し笑いをするほどでないとコメディは満足したとは言いがたい。
    蛇足になるが、1枚の申し込みに対し、同じ席番号のチケットが2枚送られてきたので受付で申し出ると、3人に同じ話をさせられ、寒い入り口で長いこと待たされた。結局「ダブリなので1枚返してください」という答え。もう少し手際よく対応できないものか。

    0

    2009/11/22 21:39

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大