実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
舞台は、京都から3時間余りの漁港町にある平屋アパートの隣り合う部屋。物語は何か事件が起きるわけでもなく淡々と日常の光景が描かれる。いや 物語を紡ぐというよりは生活の断面、もっと言えばその瞬間の出来事を切り取ったもの。だからこそ、そこに現実が立ち上がってくる。そこには家族を中心に、少子化、高齢化・介護といった現在の日本が抱える問題が潜んでいる。もちろん説明にある地元の漁師たちが寝食を共にし住み込んでいる、それも家族の一形態として捉えている。
隣り合う部屋を見比べながら、敢えて違う人間関係を見せることで、問題の広がりや複雑さを浮かび上がらせる。観せ方は、何となく部屋を覗いているような感覚、だから過度な感情移入はしないのではないか。そこは計算ずくかもしれない。
地元の漁師たちの動的な賑わい、一方 認知症患者を持つ家族の静的な佇まいが対照的に描かれるが、それを体現する役者の演技が実に自然体で良い。ラスト、季節の移ろいが人の心情に重なるという巧い演出、見事だ。
(上演時間2時間 途中休憩なし)