いらない里 公演情報 ホチキス「いらない里」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    最初フライヤーを見たとき、『いらない星』って読んでいた
    前作『アルバトロス』もそれなりに楽しめたのだが、その前の『おわりのいろは』が好みだった私にとって、今回の『いらない里』は、まさにど真ん中!
    奥行きと広がりがあっていい舞台だったと思う。

    ホチキスは、不思議とプラスチック的な印象がいつもしてしまう。
    土とか汗とか埃の感覚がない。
    つるっとしていて、手触りがいい感じでもある。
    今回の物語も、演出も演技も手際がよく、すっときれいに進行していく。

    ネタバレBOX

    コストカットする側だった自分が、コストカットで辞めさせられ、コストカットで廃止される天文観測所を守るという物語。
    とはいえ、そんなに深刻な話でもなく、「なんだ、一市民の親子が趣味にしていることを、市の財政で支えるのかよ」とも思いつつも、なんとなくそこに突っ込ませることもなく、「思い入れ」とか「思い出」みたいなもので、廃止回避に躍起に(あるいは意固地に)なる。
    現実的に考えれば、実に甘い話だけど、リアルで深刻な財政難やコストカットの話ではないし。

    そして、なにはともあれ、小玉さんだ。
    彼女の強烈なキャラと怪演は、毎回ほとんど同じとも言えるのだが(笑)、なぜか普通に演じている他の役者から浮きすぎることもなく、また、邪魔することもないという、非常に希有な存在だ。小玉オン・ステージの独り舞台にならない、嫌みさがないところがいいのだ。演出の巧みさもあるのだろうか。
    これはもう何と言うか・・・言葉が思い浮かばないので、ま、そういうことだ。

    さらに、初めと終わりの歌の雰囲気はよかった。ニコニコしながら観てしまった。
    この歌に表れているように、役者全員のハーモニーが巧みで、物語に集中できるのが、ホチキスの良さでもあると思う。

    また、ホチキスは、3作しか観ていないのだか、今回のように大きな劇場でも、前回のようにやや小さい劇場でも、セットの作り方と見せ方、使い方がウマイなあといつも感心してしまう。

    それと、不思議なのは、フライヤー。
    前回の『アルバトロス』は、舞台内容そのまんまだったのだが、前々回と今回のフライヤーのイラストがどうも舞台の印象と異なって見えてしまう。

    特に今回は、「田舎」がテーマのように見えていて、実はそうでもなく、東京の郊外の設定でも成り立つような内容だったし、イラストの土着的な、かつ、着物姿が淫靡な雰囲気まで醸し出していたのだが、そういう要素はなかった。

    そもそも説明文にあるような「田舎」への想いは、それほど強くなかったように思えるのだが。
    主人公にとって故郷を象徴するのは、妹だけであり、親が話の中心に出てこないからそれへの磁力みたいなものが働かず、最後に人に還っていくというような感覚がないのは少し残念。
    最初のほうに書いた「プラスチック的印象」は、そういうことにも起因するのかもしれない。

    タイトルの『いらない里』の「里」は「星」によく似ている文字だけど、結局そんな話の展開になるとは。

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    2009/11/15 16:22

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