汚い月 公演情報 乞局「汚い月」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    その視点へのデフォルメが秀逸
    いやぁな感じが積みあがって
    憂鬱な気分にもなりましたが
    舞台上の出来事が
    誰の感性を通しての表現かが明らかになるにつれて
    一気に面白くなりました。

    ネタバレBOX

    なにか気色が悪いのですよ。
    夫婦の会話にしても
    ご近所との距離感にしても
    なにかしっくりと馴染まない感じ。
    それが積もって溢れそうになったころ
    飛行機の轟音がやってきてクリアされていく。

    観る側にとっては
    尺の合わない服を着せられて
    じわじわと神経をいたぶられるような感じのなかで
    物語が進んでいきます。

    夫の突然の死と、それらが移植のドナーとされたこと。
    夫の勤め先の同僚や親戚たち・・・。

    でも、ランダムに現れるように感じられた居心地の悪さたちが
    次第に夫の死の前後の時系列として実体化してくるにつれて
    物語のトーンが誰の感覚を映しているのかがはっきりと見えてきて。
    そこからは、一気に惹き込まれました。

    妻にとっての感覚にデフォルメされた
    舞台上の人物たちの姿がとても秀逸。
    同時に、もし、この物語が会社の同僚の視点で描かれたら
    妻はどうにも神経質な女性として舞台上にあったかもしれないし、
    夫の姉妹の視点から物語が作られたら
    妻は自分たちが愛するものの色を変えてしまうものとして
    浮かび上がったかもしれないとか思ったり。

    絶対的な軸が無い中での、相容れない感触たち。
    そして、切り捨てられない滓のようなものが
    腐敗していくがごとき感覚。
    騒音のなかでの感情の突出でなければ吐き出せないものが、
    さらに強く伝わってきて・・・。

    ラストシーンも凄く衝撃的でした。
    なにか体にまとわりついていたものを
    全て振りほどき投げ捨てる快感が
    やってきたり・・・。

    まとわりつく汚物を一気に洗い流すような感じ。
    この感覚、とてもいやなのに、どうしようもなく惹かれてしまう・・。
    見終わって、自分の内にある爽快感を
    一方で底知れず恐ろしく感じたことでした。

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    2009/11/12 17:59

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