ファントム 公演情報 劇団サーカス劇場「ファントム」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    女優陣の熱演に支えられて
    珍しく黒崎先生が出てこない作品(笑)。1977年(昭和52年)に横浜で米軍のファントムジェット機がエンジン火災を起こし、宅地造成地に墜落した事件をもととしている。
    それまでのサーカス劇場の作品の中では一番テーマがはっきりしていて
    わかりやすかった。
    世界劇場の看板女優、そのだりんを客演に迎えたこと、霧子を演じた河野
    圭香のみずみずしい演技に支えられ、作品が厚みを増したことは確か。
    河野圭香の長台詞はなかなかのものだった。語り部となる少女アザミの
    中村理恵に注目した人も多かったようだ。
    なぜか廃校にいる用務員たちのドタバタ芝居や、「ヤモリ男」のギャグは不評だったのか、失笑がもれていた。
    やけどの女にこだわるポルノ映画監督九条が、なぜこだわるのかというのは
    米軍機事故のことが忘れられないからだが、その事故と九条との接点に
    必然性がないのがこの戯曲の欠点。それは作者がこだわっているからという理由で、サーカスはそういうひとりよがりのような強引な解釈が目に付く。
    出てくる人間の描き方が浅いのだ。
    事故の被害女性の霊が廃校の小学校に住み着いていて、九条の心の傷を癒すというラストシーンは納得できるのだが、被害女性の米軍ジェット機への怨念が9.11テロにもつながったという解釈がいかにも無理がある。清末氏が9.11テロにこだわりがあるのは理解できるが、そこにまで結びつけるのはちょっと苦しかった。

    ネタバレBOX

    この事件をTVドラマ化した際の大谷直子の好演が印象に残っているだけに、
    被害女性の苦しみが本作ではあまり伝わってこなかった。
    最初から「被害者はかわいそう」という前提で乗り切っている。
    そして「聖女」のような扱い。
    それは「幽霊船」の初演の際もそうで、取材をしたといっても、どう生かされたのか観た限りでは伝わってこない。
    どうでもよい話だが、この芝居にはもうひとつ清末氏のこだわりのエピソードが
    秘められている。それは「決定的な原点回帰を果たした」と彼が位置づける
    「リヴァイアサン」に出てくる嶋先生という小学校の女の先生である。
    霧子を火事から救おうとする青年が、小学生のとき、けがをした自分に優しく
    白いハンカチで手当てをしてくれた嶋先生に醜いやけどを負わせてしまった想い出を語るが、似たエピソードが「リヴァイアサン」にも出てくる。だが、これは観客にとってはどうでもよいことで、単に作者の感傷(たぶん、初恋の女性が小学校の先生なのでは?白いハンカチが忘れられないアイテムらしい)としか思えず、「なんだかなー」と思ってしまった。そう言えば、廃校も「リヴァイアサン」に出てきた。
    そして、最後にそのだりん演じる女の霊(幻影?)が九条を癒すのも「白いガーゼ布」となれば、もう何をかいわんやという気持ちになってしまった。
    知人の解説によれば「九条」はたぶん憲法九条からつけたのではという
    こと。憲法九条によって戦力を持たないはずの日本が、ファントムによって
    一般市民が殺傷されてしまうという悲惨さを訴えたかったのか。

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    2009/11/05 18:46

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