約束 公演情報 劇団芝居屋「約束」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    優秀でかつ、ぶれのない演技!
    演技といいストーリーといい優秀な作品でした。特攻ものというのはいつ観ても涙せずには観られない。今回もそういった意味で観客を裏切らなかった。ついつい重くなりがちなテーマだけれど、コメディ部分も織り込みながら、笑いあり涙あり、感動ありの素敵な舞台でした。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    説明にもあるように舞台はオヤジ狩りのシーンから。
    瀕死の状態での老人は薄れ行く意識の中で見た回想を主軸に物語は始まる。
    物語のほとんどが特攻隊に志願した若者たちと飛行機の整備士、中尉や伍長の特攻隊員への関わり方、行く末を案じる家族や恋人の人間関係を描く。
    国全体が理性を失い全ての国民が同じ方向を向いてた時代にも、彼ら特攻隊の中にも「自分の大切な人の為に命を捨てることは無意味な事ではない。」と考える派と、「あまりにも飛行機が古すぎる。これでは敵陣まで持たない。死にに行くようなものだ。」と考える派の意見がぶつかり合う。
    それでもお国の命令なら出陣するほかないのだ。

    そんな特攻隊員にも彼らの身の回りの御世話する女学生3人がやってくる。彼女らと特攻隊員の中で淡い恋心が芽生えるという関係の描写がいい。
    これから死んでいく彼らにとっては束の間の癒しだ。それでも別れの時には「心をこの世に残したくはない。自分自身の為に生きて欲しい。自分は君の為に死ぬ。君の未来のために戦いに行く。それが自分の大儀だ。」と話す。

    彼らが出陣する前夜には宴会が催され家族や伍長、整備班、少尉、中尉らも合流する。そこでは皆が明るく振る舞いながらも明日という日がやってこない特攻隊らを思いやりながらも、それぞれが言葉に出来ない、してはいけない心の内を表情で演技する。実に悲しい場面だ。特に自分の一人息子を戦地に行かせる父親の演技が物悲しい。女学生らは「歌うローレライ」を。その後全員で「同期の桜」を歌う。

    そうして飛ぶ当日、彼らは「靖国神社の3本目の桜の下で逢おう。約束を忘れるなー。」を合言葉に飛び立つ。その時、特攻隊員の川崎の飛行機は整備不良の為に飛べなかったのだった。「どうか自分たちを忘れないでください。」と言っていた仲間たちを思うとき、川崎は63年もの間、悔悟の中にいた。しかし今、果たせなかった「約束」を果たそうとしている。

    こうして老人は暗い夜空に浮かんだ3本目の桜の下で、やっと仲間たちに逢えたのだ。川崎の魂が特攻隊員となって仲間の元に行く。元仲間たちは直立不動の姿勢で川崎を迎える。そうして川崎の抜け殻には桜貝のような花びらがはらはらと舞い落ちるのだった。この場面の情景が美しい。絵画のように優美だ。だからこそ、冒頭の常軌を逸した若者の行動と、ひとりの老人の生きざまの対比が生きるのだと思う。

    とても素敵な舞台でした。導入歌もジーンときたし、照明もさながらキャストの演技力は秀逸で泣きながら観たのでした。。


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    2009/11/04 18:46

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