座布団劇場 二人会其の二~分け入っても分け入っても青い山(山頭火) 公演情報 占子の兎「座布団劇場 二人会其の二~分け入っても分け入っても青い山(山頭火)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     今回は初めに「老婆の休日」、次に「茶漬けえんま」、トリは以下の三作から、観客の拍手によって選ばれた作品。⓵「幽霊蕎麦」②「猫」③「幽霊の辻」今回は⓵が最も多くの拍手が在った為、選ばれた。

    ネタバレBOX


    以下、開題と参ろう。「老婆の休日」
     連れ合いを失くして長く、健康な老婆の愉しみは、病院の待合に来て、常連の年寄り仲間とよしなしごとを話すこと。あれやこれやの話の合間に悪戯心を起こして話し相手をからかったりするのも楽しみな茶目っ気のあるおばあちゃまであるが、曾孫が居て、何時頃迄生きるのか? と質問されたりもする。無論、勘ぐって年寄り仲間にこの話をするのであるが、曾孫は瑞々しくて可愛いことに変わりはない。今日の愉しみは若先生に診て貰えることだ。米寿にもなると、若い男性が体に触れてくれることなど、こんな時を除けば無いのだから、等々の可愛い艶話も仕込んであると同時に、認知症問題をさりげなく仕込んであったり、老いのメカニズムに活性酸素が関わっていることなどの実際の医学的知識等も溶け込ませた脚本は、流石に落語作家のものである。無論、思いもかけない視点からの笑いもあるが、それは前回この時はホントに障りがあってやって来た時の話で、良くこんな発想ができるよな! と感心する話であったが、これは実際に聴いて、観て楽しんでほしい。何より基本は健康だから、病院へ来ている、というスタンスの面白さである。タイトルが「ローマの休日」のもじりであるなんてことを言うのはダサいがトウシロウらしくダサいオチとしておく。
    「茶漬けえんま」
     板前留五郎が気付くと、何やら紳士的で洒落た着こなしの初老の男性がしきりと茶漬けを啜っている。訳も分からず、何処に居るのかも分からず「此処は何処か?」訊ねると六道の辻だとの答え、してみると自分は死んだらしい、で茶漬けの主に誰かを尋ねると閻魔だとの答え、王と書かれた被り物も付けず、服装もキチンとしてソフィスティケイトされた洋装にびっくりして訳を尋ねると、昔はそんな服装をし閻魔帳を見ながら地獄行き、極楽行きなどの裁定を下していたが、今では死者の自己申告制になっており、裁定で間違いでもしようものなら訴えられて大変なことになってしまうし、司法試験は難しいから、今は裁定は、係の者に任せて自分は判を押して居ればいいのだとの答え、こんな話をしているうちに友人のキリストや仏陀の話も出て、留五郎は何れにせよ閻魔の友達という扱いになってしまった。キリストは、酔うとあばらの傷を見せながら暴れるという。そして現在の天国と地獄の様子を詳しく聞かせてくれた。さて、閻魔庁へ出向くことになった両人、留五郎は閻魔の友人ということで他の多くの物故者たちが長い間並んで審判を待っているのに、着いたら直ぐに審判して貰い、天国へ召喚となった。この際、医者や弁護士、権力者と異なり板前は罪を猶予される割合が非情に高いこともあり、それなりに犯罪得点の高い罪もあったのだが、天国行き、ということになった。天国へ着いた直後、覚束ない足取りで道を辿っていると中国の聖人の足を踏んでしまった。聖人は痛がったもののその過ちの咎は問わず、天国では住人の間に自他の区別は無く、私はあなた、あなたは私という究極の思い遣りの関わりがあるのだと説く。然し留五郎には量子の重ね合わせの論理のようにケッタイな仁徳の極致を実践するこのような思想は理解できない。聖人は、理解させようと彼の頭をこづく。それでも理解しないので蹴りを入れる。尚理解しないので金属バットで殴ろうとした。ホウホウの体で逃れた留五郎の前に何やら手を上下に動かしている人が居る。服装と動作から見て底釣りをしていると見える人物に何をしているか問えば、釣りをしているとの答え。無論芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の1シーンだ。こんな調子で天国の話は進んでゆくが、留五郎は天国の穴から地獄の血の池へ落下してしまった。仏陀は彼が閻魔の友人であることも聞き及んでいたから救おうとするが、中々叶わず、キリストに助けを乞う。やってきたキリスト共々助けに向かうが。そこは落語、極めて破天荒なオチが付いている。元ネタは1977年桂枝雀の新作落語発表会で発表された作品が原型となった作品だという。哲学的であると同時に現代物理学の最先端を行くようなハナシである。
    「幽霊蕎麦」
    トリを飾ったのも新作落語であった。3カ月前に亡くなった夫は、妻が集まった香典で欲しかった着物を買ってしまい四十九日の法要をしてもらえなかった為、中有の後成仏できず戻って来てしまった。食いしん坊で浪費癖の凄まじい女房は、愚痴る夫に働いて法要の費用を稼げ、とサジェッション。仕方なく夜中に人気のない場所で蕎麦屋を始めた幽霊であったが。稼ぐ度に無駄遣いで法要を出して貰えぬ哀れな幽霊の哀歓漂う傑作。オチは観てのお楽しみだ。

    0

    2022/08/21 09:06

    0

    1

このページのQRコードです。

拡大