まったく新しい‼︎宇宙創造論 公演情報 演劇ユニットG.com「まったく新しい‼︎宇宙創造論」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    説明は、少し「難解さ」を思わせていたが心配無用。しっかり楽しませてくれる。お薦め。
    物語は虚構に次ぐ虚構の世界、展開していく どの場面が現実なのか想像する楽しみ。その観(魅)せる面白さが半端なく凄い!虚構という足元が覚束ない不安、それを逆手にとって不安定もしくは不明確な世界に我々は生きていることを思わせる。壮大な宇宙、解明しきれていない諸々を創造する、そこに舞台化する面白さがある。一方、現実は目に見えないコロナ…得体の知れない疫病と戦っている不安な日々、それでも逞しく生きていく。そんな状況下、演劇という虚構の世界で面白可笑しく楽しませ、勇気づけてくれる佳作。

    公演は「演劇ユニットG. comがコロナ禍の演劇を模索するためにスタートしたアトリエ第Q藝術3部作・完結編」と銘打っており、第1部・第2部のダイジェストを(映像で)観せ物語に広がりを持たせる。舞台は稽古から上演する迄、スタッフ・キャスト、そして観客まで すべて人と関わる。内容は、虚構等という人との関係を希薄に描きつつ、舞台そのものは濃密に描いている。勿論、コロナ感染予防対策として、例えば第2部「神様はつらい。」では舞台と客席の間にアクリル板で仕切るといった配慮をしている。色々な意味で劇作の試みがされた公演だと思う。第1部「虚数」を観ていないのが悔やまれる。
    (上演時間1時間25分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央にテーブルと椅子、正面壁にはゲーム モニターを思わせるスクリーンがある。上手には演台があり、説明にあるノーベル賞授賞式のスピーチから物語は始まる。これから展開する物語(場面)のプロットや難しい理論の説明をスクリーンに映し出す。舞台セット(会場 構造を活かした)の工夫は、随所で見られるが、それは実際 劇場で観てほしい。

    人物は、私、妻、娘、息子という一人称、他にプログラマー、デバッガー、アバターという三人称のような存在が登場する。物語は、今から数年後、ストックホルムで開かれているノーベル賞受賞式の壇上で、ノーベル賞を受賞した私(大学教授)のスピーチから始まる。受賞した研究は『宇宙ゲーム理論』。そして、このゲーム=宇宙を作ったのは誰なのか?という問いについて、私はある真実を皆様にお話ししたいと…。私のスピーチが終わると、一転、家庭団欒のような光景。息子は後ろ向きで顔は分からない。アップテンポな描き方、現実か虚構か判然としない世界を作っているのは自分だ と思っている人々。果たして、操り操られているのは、その主導権を握っているのは…。

    スタニスワフ・レムの「新しい宇宙創造説」をヒントに劇作しているらしいが、原作にはそもそもストーリーは一切なく、架空の書物 の 架空の執筆者 が取った 架空のスピーチ が延々書き連ねた超難読本らしい。それを舞台化し観客に分かり易く、しかも面白く観せる。それは観客の脳内を刺激し続けること。現実の世界ではなく、かと言って現実から離れ過ぎた荒唐無稽でもない。随所に高度な理論や哲学的な台詞が散りばめられており、現実と虚構の程良い距離感が知的好奇心をくすぐる。物語は私の「宇宙ゲーム理論」をベースに、そのバーチャル世界へアクセスしたり逆に手玉にとられたりといった創造ならぬ騒動が繰り広げられる。まさしく目まぐるしい変化--七転八倒の人間賛歌SF劇だ。

    思わぬ所からプログラマーやデバッガーが現れ驚かされる。また庭を使った場面をスクリーンに映し出すといった、中継光景が闇に照らされた照明で幻想的に見える。もちろん、壁(扉)を開けるため 実際の光景(演技)を観ることも出来る。ゲーム プログラミング言語・数式等を映し出し、仮想空間へ誘う巧さ。プログラミング・書き換え・上書きを思わせる描き方。「仮説」ゆえに「理論」として認められなかった私とその家族の物語は、観応え十分。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/08/18 21:58

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