水になる郷 ミズニナルクニ 公演情報 SPIRAL MOON「水になる郷 ミズニナルクニ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    作家の描く世界を演出
    「水になる郷 ミズニナルクニ」を作家が書き上げてるさま。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    舞台の端っこに作家の部屋があり、その反対側の端っこに分岐点守がある。中央は「水になる郷」の入り口。

    作家は一人の女と一緒に部屋に居た。橋の上から飛び降りようとした彼女を助けたと思っていた作家は、後に、その女は既に自殺して死んでいたと悟る。女はこの世の未練が幻となって死後、橋の上に立っていたらしい。幽霊の彼女の傍で作家は舞台の脚本を書いている。それが「水になる郷」

    舞台は作家の脚本進行の様子と同時に本の中の物語を演じる。

    「水になる郷」は雨が降らない代わりに人が水になって他の住人の生活を支えて郷が成り立っていた。ここでは家族の為に自分が水になって人々を潤しやがて水が溢れて湖になった父親を慕う来鳥と誉の姉弟の心の描写を鮮やかに映し出す。そして分岐点といわれるこの世とあの世の狭間(境界線)に腰を据えて分岐点守が神様のような風貌で守っているが、この守り神がどんな状況でここにやってきたかも劇中に映し出され、私は不思議な世界の端っこにでも座ってるような感覚になってワクワクする。

    やがて物語が進むにつれて、愛した人が死んでしまった後に残された者が持つ心の翳りにふれた思いがした。突然、誰かが居なくなったという恐怖。空虚感とも似た感情をどこにも捨てられない来鳥を、分岐点守がゆっくりと塗り薬を傷に擦り込むように癒していく。この場面のセリフがいい。

    一方で作家雨宮に声をかけられた幽霊景は「まるで風景の一部のようだった。誰にも愛されず、愛する事もなく憎まれず、憎むこともない。生き苦しかった。ああ、間違って生きて来ちゃったんだな・・、本当は水に生まれるはずだったんじゃないかって。」と雨宮に訴える。そんな景は雨宮と暮らすうちに雨宮の景への想いに触れて砂漠のような心に水滴が広がるように沁みて、沁みて、沁みて、やがて潤ってくる。

    こうして自殺した女は「水になる郷」へたどり着く。という筋だったが、最後の終わり方が、あれ?あれれ?これで終わり?みたいな気持ちになった。急に物語がストン!と幕になってしまったような感覚!

    んじゃ、「水になる郷」の物語はソレで終わり?来鳥と誉は仲良く暮らしました、でいいの?それとも景が死んで「水になる郷」にたどり着いたから終わりなの?

    優しくもあり、ちょっぴり涙を流しながらも物足りなかった物語。

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    2009/10/29 17:18

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  • きゃる>
    >みささんのように観る目の肥えたかたにそう言っていただけると電夏ファンとしてはとても嬉しいです。

    えっと・・・ホント、関係者ではないんですよね?笑

    >いつも拝読していて思うんだけど、シリアスなお芝居のみささんのレビューの文章は短編小説を読んでいるようでもあり、また絵画のように情景が浮かんでくるの。これは観ていない者にとっては大変有難いことです。

    畏れ入ります。またまた、嬉しいお言葉!大気圏抜けたら、もう行ける所はないなぁー。笑

    >実際観るより、みささんのレビューのイメージのほうが数段良かったりして。
    だったら、劇団泣かせですね。いや宣伝の面では喜ぶべきか(笑)。

    いあいあ、やはり観てなんぼです。
    ワタクシのはほんの一部のUPですので、舞台には叶いません。
    シリアスとコメディ、ホラー、サスペンス・・・どれも楽しいったらありゃしない!(0^)

    2009/10/30 13:23

    >電夏を観たドキドキ感がまだ残ってるようです。あれを観なかったら、また違ってたかも。笑

    みささんのように観る目の肥えたかたにそう言っていただけると
    電夏ファンとしてはとても嬉しいです。

    いつも拝読していて思うんだけど、シリアスなお芝居のみささんのレビュー
    の文章は短編小説を読んでいるようでもあり、また絵画のように情景が
    浮かんでくるの。これは観ていない者にとっては大変有難いことです。
    実際観るより、みささんのレビューのイメージのほうが数段良かったりして。
    だったら、劇団泣かせですね。いや宣伝の面では喜ぶべきか(笑)。

    2009/10/30 12:47

    きゃる>
    いつもながら、お褒めの言葉を頂きまして畏れ入ります。
    そのうち空飛んじゃって大気圏を抜けるかも。いったいどこへ?笑

    ええ、優しい物語でしたが、無理に終結した感が否めない。。
    電夏を観たドキドキ感がまだ残ってるようです。あれを観なかったら、また違ってたかも。笑

    2009/10/30 10:46

    水をテーマにした不思議な世界のお話ですね。
    みささんはお芝居の選び方が上手だと思います。
    と、私が言うのも僭越ですが。
    今回も「語り部」としてのみささんの名調子を楽しませていただきました。
    特にここがいいですね

    >空虚感とも似た感情をどこにも捨てられない来鳥を、分岐点守がゆっくりと塗り薬を傷に擦り込むように癒していく。この場面のセリフがいい。


    >んじゃ、「水になる郷」の物語はソレで終わり?来鳥と誉は仲良く暮らしました、でいいの?それとも景が死んで「水になる郷」にたどり着いたから終わりなの?

    優しくもあり、ちょっぴり涙を流しながらも物足りなかった物語。

    最後の3行にみささんのやりきれない思いが集約されてたけど(笑)。

    2009/10/29 21:09

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