あつい胸さわぎ 公演情報 iaku「あつい胸さわぎ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    凄まじい傑作。これを見逃すことを考えるとゾッとした。評判の良いものはきちんとチェックしておいた方がいい。観ればすぐに解るように出来ている。
    かなり映画向きの題材、今作のラストをきっちり作品化できる奴がいれば凄い技量。(来年公開予定ですでに撮影済み!やれんのか!?)
    役者陣はもう何一つ言及する必要がない完璧な布陣。初演の辻凪子さんヴァージョンも観たかった。

    主演の芸大生、千夏役の平山咲彩さん。今作を観て彼女のファンにならない人がいるとは思えない。彼女の醸し出す等身大の痛みや生活の質感は至極。少女にこそ、これを体感して貰いたい。
    その母、昭子役の枝元萌さん。もうこの方は黒澤明クラスの映画の女優。この人が象徴している表現はすでに作品の枠を超えている。
    昭子の勤める縫製会社の後輩、透子役の橋爪未萠里(いゆり)さん。物語のキーパーソン、難役を見事に成立。
    縫製会社の新任係長、木村役の瓜生和成氏。全く演技なのか素なのか判断つかない。最早素人には解読不能。
    千夏の幼馴染みの役者志望の芸大生、光輝役の田中亨氏。凄くリアル、絶妙な配役。

    シングル・マザーで娘を大学にまでに入れた昭子。母子二人の暮らしには近すぎるが故の口に出せない痛みが点在。千夏は小説という手段で胸の内を吐き出そうとするが。

    田舎町にやって来たサーカス小屋、その色褪せたテントの美しさ。皆精一杯に優しくて精一杯に正しかった。ただただその無力さに泣くしかない展開。だがそれだけでは終わらない。

    ネタバレBOX

    「そんな話は置いといて、まずは腹ごしらえ、ステーキを食おう」。これまでの負け戦の分析ではなく、これからを生き延びる為のルートを探るラスト。「書き続ける事こそが生きる事」と言わんばかりにノートに無我夢中に書き殴り始める千夏。この瞬間こそが文学の誕生で、ひたすら書き殴った文字列がこの世界の根本を揺るがす。生きることは目的なのか、書く為の手段なのか、世界と自分との関係性がぐるぐる廻り始める。クラクラする終幕。

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    2022/08/12 23:15

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