あつい胸さわぎ 公演情報 iaku「あつい胸さわぎ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    三年前にアゴラで初演を見た。平成から令和へ、幕開きの傑作だった。
    再演は、コロナのただなか、劇場もスズナリに変った。配役は主人公の女子大一年生の役が辻凪子から平山咲彩に。最も印象が変わったのは美術で、アゴラでは数枚の平台をいろいろな形で組み合わせ、柱を立て、そこに赤い糸が張ってあった。今回は中央の円形の台を置き、その上に二つの丸い机を相似形に置き、それを囲むように抽象的な縦線の入った壁が垂直に立っている。
    セットが抽象化されたように本もずいぶんよく整理されていて、人間関係のドラマがテンポよく進む。大分短くなっているのではないか。今回は1時間50分。俳優の出入りも初演の不定形のセットと違って動きやすい。ちょっといいなと思っていた主人公が試作する課題の鮫(だったか?)の童話や、舞台になっている中小企業の繊維工場の生活感のあるシーンはかなりカットされている。その代わり後半になると、乳房をめぐる女性の生き方の論議などは補強されていてこの三年の間にもジェンダー問題はずいぶん深くなったと思う。
    この本は、作者がコロナ騒ぎの時に暢気すぎると批判されるのではないかと危惧するように(確かに私は、これは京塚と波野で新派で見たかったとも思った)、初演では、京阪神の地方都市の夏の情景を地方色濃く描いていてホームドラマとしても青春ドラマとしても、それを包括した時代のドラマとしても卓越した作品だった。大阪の現代の「はんなり」も素晴らしかった。令和を代表する一作品であることは初演も再演も同じ、時代を代表する傑作である。
    しかし、自分の好みで言えば、夏の縁台に続いているような母子家庭の母子の夏物語が人情噺の色濃く演じられた初演の方が好きだ。今回は大阪弁もせせこましい。初演のゆったりと演じられたサーカス見物のシーンなど忘れられない。橋爪未萌里は今回はなかなか良かった。瓜生は初演の時の笑い声の工夫など捨てなくてもよかったのに。全体に「軽さ」「世話物の人情(赤い糸)」が薄くなったのが私としては残念に思うが、それだけ、解りやすく、ドラマとしてはテーマの緊迫度が深まったともいえるので悩ましいところだ。

    ネタバレBOX

    地方から出てきたいい作者を時に東京の演劇界はつぶす。つぶすというのは言葉が悪いが東京の演劇界は興行と眼前で直結しているので、作者その対応にうんざりしてしまうということはあるだろう。。パルコも贔屓の引き倒しにならないように祈っている。

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    2022/08/12 23:04

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