smallworld'send 公演情報 時間堂「smallworld'send」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    それぞれの作品が何かを超えているから
    確かに4時間でしたが、時間はそんなに感じませんでした。
    終演後立ちあがって、初めて腰の感じに座り続けていた自分を自覚した・・・。

    それぞれの作品が、戯曲の設定やせりふを超えた何かを作り出しているから
    観ていて飽きないのです。

    開放的な会場の雰囲気も、うまく機能していたと思います。

    ネタバレBOX

    長編二つに短編が三つ。
    長編についてはWIPを拝見していました。

    ・星々を恐れよ(長編)

    主人公を演じる佐野功のお芝居が淡々とペースメークをして、他の出演者たちが彼のリズムをベースにお芝居をしていく感じ。登場する個々のキャラクターの想いが佐野の色の上でしなやかにくっきりと浮かび上がり、そこから今度は佐野のキャラクターが緩やかに強く伝わってくるのです。

    ある種の達観がもたらす不思議な軽さがすっと作品全体の色を染めて、義父の死にも説得力が生まれて・・・。

    キャラクターたちの表現にもぞくっとくるほどに瑞々しく秀逸なところがありましたが、それらがすうっと消えて一つの色に変わるような終盤にも瞠目しました。

    WIPの時と比べて、統一感が作品にあって、それゆえ個々のキャラクターにしっかりした実存感が生まれていて・・・。その密度の高まりに目を見張りました。

    ・工場でのもめごと(短編)

    冒頭の押さえた感じや雰囲気作りがしっかりと効き、後半の力技に圧倒的なグルーブ感が生まれました。

    大川と百花の相性が凄く良いのでしょうね・・・。互いが互いの力をぐいぐい引き出すような感じ。完璧に決まっていく台詞が観ている側はもちろん演じている側にとってもすごく心地のよさそうな熱を醸成していく。

    この境地まで演技が磨きこまれているからこそ、戯曲に内包しているニュアンスがパンチラインで解放される。戯曲が求める「演技の卓越の領域」に二人ががっつりと足を踏み入れて・・・。

    なかなか体験できないような突き抜け感に、観終わって拍手をしながら心が躍っておりました。

    ・熊 (短編)

    境宏子が冒頭からしっかりとキャラクターを演じ上げます。自らを律し支える女性がひとけた違う解像度で現出した感じ。ロシア人女性の自尊心がしなやかな演技から沸き立つよう。そこにやってくる白鳥の愚直さや頑固さも筋金入りの感じ。そして二人のお芝居にはキャラクターの内側に満たされた資産家としての教養や知性がしっかりと折り込まれているのです。

    それぞれの言動が相手の触媒となり怒りが膨れ上がっていく姿にぐいぐいと惹きこまれました。舞台のテンションというか質感がしなやかに増していく感じ。で、観る側が頂きまで連れてきてもらっているから、怒りの対象が憧憬に変質してく終盤にも不自然さがない。チェーホフの面白さってこの質感のクオリティが前提なのかも・・。

    双方の中間にある戸谷のお芝居の間が、随所で場の雰囲気に豊かさを付け加えて。

    ほんとうに面白かったです。

    ・かんしゃく玉(短編)

    百花がいきなりロシアから日本に舞台をトリップさせてしまいました。
    この人がつくる、その時代の色が本当に秀逸。観る側が何かを考える前に、舞台の雰囲気に染めてしまうようなしなやかな力を感じました。で、貞淑さにちょこっと世渡りの器用さを持ち合わせ、でも、その気持ちが揺らいだ時伝法な気持ちをかんしゃく玉にゆだねる空気がすごくよい。その、ちょっと息詰った内心の色にかんしゃく玉の炸裂音がほんとうにあうのですよ。

    主人や主人の友達との関係にも、暖かさとペーソスがバランスよく配されて、ヘチマコロンの瓶の使い方が絶妙におかしい。

    かんしゃく玉の破裂音から伝わってくる溢れそうな想いから、夫婦間の機微を演じる役者の繊細な表現力を感じて。
    その空気感に浸り、物語の肌触りに魅了されてしまいました。。

    ・奴隷の島

    実は、WIPを観た時にはけっこう不安を感じた作品。
    その時には、なにか箍を失ったような印象があって、
    なんというか個々のお芝居が、キャラクターの個性を頼りに、あちらこちらに観客を引っ張っているようにすら感じて・・。
    パーツの良さはあったのですが、物語全体を包むだけの膨らみが決定的にかけている感じがしました。

    でも、本番では、作品に物語の枠組みと広がりがしっかりと生まれていて。

    本番を見て感じた一番の違いは大川の突っ込みのよさ。WIPの時にあったためらいが消えて、抜群のクオリティとタイミングで突っ込みを差し込んでいきます。それが、大川演じるお姫様がもつある種の無神経さというか傲慢さを現わすだけではなく、他のキャラクターの独善性を際立たせていくのです。

    奴隷たちと島の住人を演じる3人には、独演会に近いシーンが用意されていて、役者たちもすべてを解き放ったような大迫力のお芝居を展開していきます。これらが圧巻。ついひと膝前に乗り出してしまうほど。伊沢の王子様がもつノーブルさや若さというかひ弱さにもだっぷりの実存感があって。

    それぞれのお芝居が枠を外れて突き抜けそうになるところを、大川が突っ込みでうまく一つの箍の内側に収めるから、ラストの大団円の常ならぬ高まりが唐突にならないで、まっすぐに膨らんでいくのです。

    もっと昇華させることのできる部分もあるとは思うのですが、それでも、黒澤演出がこの古い物語をよくここまで運んだなと思うし、それを具現化させる役者の力もそれぞれに半端じゃない気がするのです。

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    観ているときには疲れなど感じなかったのですが、6時に始まったお芝居が終わってみれば10時近く。作り手の真摯さが、観る側の時間間隔を失わせたような舞台でありました。







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    2009/10/25 10:54

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