月虹の宿 (げっこうのやど)2022 東京公演 公演情報 日穏-bion-「月虹の宿 (げっこうのやど)2022 東京公演」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    仕事がズレ込み諦めかけたが、会場アクセスを再度調べたら間に合うと判り(恵比寿は下北沢よりうんと近かった)、久々の日穏観劇と相成った。
    初めての劇場は、急いだせいか入口から地下へ潜る案内が見えず「シアターアルファ」のロゴ看板に誘導され二階へ、更にのびる階段と看板に誘われ三階へ昇ろうとしてさすがにお化け屋敷ではあるまいしと、無人の劇場で途方に暮れかけた所、ちょうど現れた裏方さんに聞いて地階と知れた。
    内部は、浅草九劇型の横広、緩やかな客席(浅草より奥行きはありそな印象)。しかし随分と華があるのは、恵比寿という街のせいか、ビル自体の作りのせいか、はたまた客層の若さか、業界人ないし演劇人(それも劇団ちゅうより事務所とか)っぽい人の混じり具合か。あるいは既に見えている作り込み型の舞台装置のためか。
    座席はしっかりと中々座り心地良い。
    「初日?」と思うほどに活気があり(7分押しした事もあり)、腑に落ち兼ねたが、そう言えばキャストに名のあった柴田理恵はワハハのだったか、と当たりを付け、開幕に間に合わせた。(実際は2日目3rdステージであった。)

    芝居の出だしは難しいものなのだろう。鳥の巣作りも最初はよく判らなかったりするのが段々形になって行く。今回の芝居も隙間やら突っ込み所が散見されるオープニングで正直先行きが不安だったが、ある時点で突如テーマらしきものが浮上する。ピースが少しずつ埋まり、絵になって行く。以前二度ばかり強い印象を残し久々の目見え剣持氏、TOKYOハンバーグでよく目にした小林氏、張ち切れ中島氏、ほか力強い役者陣(遠目にも行為やキャラが滲み出る)が芝居を息づかせていた。
    今少し寝かせると全く別の感想が顔を出しそうでもある。(後日追記、としておく・・まだ書くんかい。)

    ネタバレBOX

    2016年下北「劇」小での観劇以来、2回目。但しちょうど半年程前に日穏製作のショートムービー「月の海」を観た。「家族」が日穏の変らぬテーマだなと思ったものだが、実は前に観た芝居(タイトルも同じく「月の海」)を元に作った映画だと判ったのは今し方の事で。。芝居の投稿には渋い感想が書いてある。が、映画はよく出来ていた。その心は、、と投稿を読み直すと、細かな筋は分からずとも、その時何に対して何を感じたかが思い出されて興味深い。
    この時のは、夫に去られ(生死は判らず)義理の母に辛く当られる介護疲れの嫁の「辛さ」の度合いが迫って来ない、的な感想で、介護は奥の間で行われているので「想像」に頼るしかなく、しかも「辛い」を想定しないと成立しない物語であるため、観客はより感動したいと思えば極大の「辛さ」を「想定」するも可だが、具体性の不足から「辛い」は一般的なそれに止まらざるを得ない。感動の結末が得られたなら、所詮「物語」成立の手段として用いた自分の曖昧な想像など、劇場を出れば忘れてしまう。つまり芝居を通して癒されるべき嫁の辛さは、具体的な介護場面によって描写されるべきだ、という意見だった。
    映画は登場人物を削り、母と嫁二人の暮らしという閉じた世界と、そこに闖入する他者の関係に凝縮する事で、その場面(介護)を無理なく現前させる事ができていた。なおかつ、女優矢野陽子という得難い存在により芝居のストーリーに真実味を与えていた。この事は、芝居の可能性を考えさせるものでもある。

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    2022/08/06 22:43

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