ダイバシティーファミリー 公演情報 A.R.P「ダイバシティーファミリー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    物語は、自殺したと思われた夫であり父親が生きていた という奇抜な設定から、身近な夫婦、親子の在り方や捉え方へ巧く誘い込む。面白可笑しい場面を小刻みに展開させ、テンポ良く観せることで観客の気を逸らせない。
    婚姻届けを出した夫婦、優しい父親といったことが”普通”なのか分からないが、この物語では戸籍に拘らないパートナー、厳しく突き放したような態度にも 親なりの思いがあること、そんなダイバーシティの考えが立ち上がってくる。

    コロナ禍で延期を余儀なくされたリベンジ公演、A.ロックマン氏が当日パンフで「今、とてつもなく演劇がやりずらい状況も、父が僕に課した試練のように思えば、ありがたくその試練と向き合い・・・」と書いているが、それを実行 乗り越えたかのような公演、しっかり楽しませてもらった。

    なお、小劇場B1はL字型客席であるが、役者の立ち位置や目線は 一方の客席を意識しているように思われたのだが…。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は入隅に平行二段の板があるだけの ほぼ素舞台。場面に応じミニテーブルや座布団、BOX等の小道具が持ち込まれ状況を作り出す。また壁面への照明で枝葉を思わせる風景を描き出す。場面転換の素早さと効果的な情景描写を両立させる見事な演出だ。勿論、ミラーボールや壁の電飾に彩られたショーも同様。

    雨の中、慌てふためいている男女の短い場面から物語は始まる。6年後、青木ヶ原に遺書を残して失踪した父・竹富拓郎(Hibikiサン)の七回忌法要が営まれている。その席で母・さちこ(中村容子サン)が再婚を考えており、その相手を呼んでいると…。そんな時に父が生きているとの電話が入る。竹富家には一男三女がいるが、息子・カズヤ(タカギマコト サン)は父の連れ子で妹たちとは腹違い。彼は結婚し妻は臨月を迎えている。長女も結婚し、二女は父親想い、三女は浮気性の男と付き合い、といった夫々が抱えている事情を手際よく説明していく。また冒頭の男女との関係も明らかになり…。

    父親は、ショーパブで郷ひろみのモノマネ歌手・レッツゴーひろみ になっており、家族が知っている口数が少なく寡黙な性格とは違っており戸惑うばかり。再婚を考えていた母さちこ、優しくされた記憶のない長男カズヤ、父親思いの二女ともみの夫々の感情が揺れ動く。自分の思いも大切だが、相手(パートナー)の気持にも配慮する、そんな思い遣りや気配りに心が温まる。苦手だった父の思いを母から知らされ、自分の子が生まれて初めて知る親心…子が可愛くない親なんかいない。全編コミカルかと思えば、ほろり とさせる憂事もしっかり描き印象に残る作品に仕上っている。

    夫婦や恋人もしくはパートナーといった2~3人で紡ぐ話を小刻みに入れ、関係の多様性をさりげなく描いているかと思えば、一転 家族全員を登場させて深い絆を観せる、その場面構成が実に上手い。同時に役者陣の演技の確かさ バランスもよく、舞台の雰囲気に親しみが感じられる。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/08/06 17:19

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