蝶々結び 公演情報 LUCKUP「蝶々結び」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     手の込んだ舞台美術がリアリティーを持たせる中、夢の中にでも居るように始まった物語は、時折極めて本質的な問いを発し、夢と現の央(さなか)へ我らを惹き込んでゆく。さて、諸君! 問題です。謎を解いてくれたまえ! (若手役者さんたちへのエールを込めて☆は5つとした)
     拝見して一昼夜経つと気付いていたが上手く纏まらなかった今作の、面白い深読みを纏めることができたので追記することにした。(8.6 22:45)

    ネタバレBOX

     舞台美術は駅舎を表現している。ホリゾント手前センター部分が額縁舞台になっており額縁下手上部には1番線を示す看板、上手上部には案内放送用のトランジスタメガホンが据えられている。下手の出捌けスペースを取って客席側、側壁横に男女共用手洗い。正面壁には中段・上段に絵が掛かっている。1番線ホームの上手にはホームへ通じる階段が見える。この階段から見て客席側には休憩所の体裁をした構築物。ホームへ上がる階段へ通じるトランジスタメガホンの客席側地面には改札。休憩所の手前と奥とが上手の出捌け。ホームに接した正面壁には作り付けベンチ。演技スペースを取って亀甲カッコの左カッコを右に九十度回転させたような大型ベンチが1つ。
     Monochrome sideを拝見。プロデューサーが若手育成を考えての公演なので役者さんは皆若い。何れの役者さんの声量も程よく、溌剌として清々しい。
     物語の構造を理解するのに若干手間どるだろうが、面白い作りだ。謎解きをし乍ら観ると楽しい。無論ヒントは随所に鏤められているからこれらのヒントをキチンと解いてゆけば自ずと答えは出る。途中、一言も台詞を発することの無いキャラが登場するが、謎めいた登場と容易くは謎解きできない脚本、見事な演出が相俟って、一瞬背筋が凍るような戦慄が走ったシーンがあった。
     それぞれの登場人物の関係を良く観ること、タイトルは誰と誰を結び付けているのか迄理解できれば作品の理解は程よくできているのではないか。ここまで謎解きができれば物語の主張も理解できよう。知的な仕掛けがふんだんにあって目が離せない作品だ。
     以下、追記である。
     今作の主要なテーマは自由とそれを追い求め突っ走ることで起きる結果について生起する諸々の事象に関わる物語だが、其処に人々の念(おもい)がキチンと伝えられている点がグー。殊に母の子に対する暖かな愛には胸を撃たれる。
     さて深読みである。一般に日本では戸籍関連書類は、アイデンティティーを保証する公的書類としてパスポート取得や就職等の提出書類にも含まれてきたという印象がある。時代の推移の中で多少の変動はあろうが、現在でも例えば子供が生まれるとなれば親や縁の深い者達は新たに生まれてくる子の名前を考えるのは普通のことだろう。だが、それは普遍的なことだろうか? 子の誕生を祝福することは、よほど不幸で深い事情が無い限り喜ばしいことであろう。だが、アイデンティティーに関わるような自分の名を生まれて来た子自身が自ら決められないことは、その子の自由に反する可能性がある。また今作は自由をも大切なテーマとして扱っているのだから、こういったことをも考えるのは作家には自然なことかも知れないではないか? このように自由な発想が作品中の台詞にもフンダンに現れているのだとしたら? この作品の解釈の難しさは先にも指摘した通りだが、この日本人には慣れない名前を自由に発想するという考え方そのものに対する不慣れは、観客をもアイデンティティーの揺らぎに誘い込むには充分な条件かも知れない? だとすれば、これは現代物理学及び生物学の最先端に於ける大問題‟揺らぎ“にも関係してくるのである。ここ迄言えば、観客に対する更なる宿題は明らかであろう。当分、この知的眩きから逃れる術は無い。その意味では更に面白く奥の深い作品ということもできるのだ。

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    2022/08/06 13:29

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  • 皆さま
     少し、追記をしました。
    ご笑覧下さい。
           ハンダラ 拝

    2022/08/06 22:49

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