あつい胸さわぎ 公演情報 iaku「あつい胸さわぎ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    私の見てきた中でもベスト舞台の一つ。初演も良かったが、再演の今回も期待を裏切らない素晴らしい舞台だった。冒頭の夜食があるかないかをめぐる母娘の会話から笑える。母役の枝元萌が絶品。娘(平山咲彩)も、幼馴染の男の子コウちゃん(田中亨)に対する、臆病な恋心が仕草の端々から醸し出されて微笑ましい。
    さらに母親の職場の、上司の木村さん(瓜生和成)と透子ちゃん(橋爪未萠里)を入れた会話も笑える。この笑いはボケとツッコミが基本で、上質なコントや漫才のつくりである。母がボケても、東京(実は千葉)から来たばかりの不器用な木村は突っ込めず、そこがまた笑えたりする(笑)

    女性の「胸」をめぐって話が回っていく作劇が見事。喜び、恥じらい、成長、母と子のずれ、びょうき。肉体に関わるときめきや、性の目覚め、自意識が、胸によって具体化される。

    ネタバレBOX

    後半、娘の乳がんが発見されて、母と娘の関係が、無邪気でたわいなかったものから、真剣でヒリヒリしたものに変わる。とくに母親が娘に向かって真剣に語るラストが胸を打つ。

    母と娘の恋の行方もドキドキしさせつつ、二人ともサラリと失恋してしまう。ここの描き方がうまい。相手は何も気づかないまま、無理なく、本人に失恋を悟らせて、変にしこりを残さない。
    それが、母と娘の関係のラストをいっそう印象深くする。

    最後の母の言葉が、自分についての、20年も恋などしなかった、久しぶりの恋心と失恋の話だった。記憶では、娘のことをもっと語ったと思っていたが、それは「いつの間にか大きくなっていたんだね」(言外に胸も)「気づかなくてごめんね」の一言だけだった。あとは娘が「肉食って話そう」云々で、話の続きを予想させて終わる。それで見る方は涙腺が緩んでしまう。喋りすぎない、リアリティーを壊さない、余韻と余白を残したラストだった。

    0

    2022/08/06 09:22

    1

    1

このページのQRコードです。

拡大