神村恵 新作ソロ公演 「次の衝突」 公演情報 神村恵カンパニー「神村恵 新作ソロ公演 「次の衝突」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 踊る霊長類
    現代美術製作所という会場は前にいちど、トリのマークが公演をやったときに来たことがある。中央に太い柱がある、かなり広い場所。踊る場所として選ばれたのは白い壁が直角に並ぶその一角。ゆるい曲線を描いて置かれた椅子と二つの壁が扇型のスペースを区切っている。その真ん中あたりに扇風機が一台、開演前から回っている。左右の壁際に小さなスピーカー。下手にスタンド式の照明器具が3つ。
    神村恵が客席後方から、客の間を抜けて登場。衣裳は黒っぽい膝丈のスカート。Tシャツはピンクと紫の中間みたいな色。足袋サイズのグレイのソックスは扇風機のスイッチを足で切り、蹴飛ばすように扇風機を倒してあとで、じきに脱いでしまった。

    ネタバレBOX

    今回は、複数のダンサーとやっているカンパニーの作品とも、前にいちど見たソロ公演ともだいぶ違う。これまでの彼女のダンスはある動きを繰り返しながらそれが少しずつ変化していくのを確認する作業というか、自分の体の動きとその変化をダンサーが主体的に見守っているという印象が強かったのだが、今回のはなんというか、最近よく彼女が共演している手塚夏子の影響みたいなものが感じられた。ダンサーが主体的に体を動かすというよりも、体の内側から生まれてくる衝動を受け止めて体を動かしているというか。
    全体的にミニマルな印象はこれまでと同じだが、今回のは力を抜いて体を揺らせている、ダンスの振りとして体を動かすのをやめているという感じ。パッと見には、酔っ払いとかゴリラなど霊長類の動きのようにもみえる。腕はだらんと下げていることが多く、手を顔の高さまで上げたという印象がまったく残っていない。
    ただ、中盤には明らかにバレエを思わせる足と手の動きが、だらだらとした動きの中から見えてきた。(経歴を見ると、彼女はバレエを習っていたことがある)。それに、倒した扇風機を隅へ移動させたり、ドリルみたいな工具を手にしたりと、段取りめいたことは間々でちゃんとやっているので、そこだけは普通の人間にもどったように見える。
    また、ソロ公演と銘打ってあるが、途中で客席に紛れ込んでいた岸井大輔が、舞台に出てなにやらいろいろと話始める。そしてその間も神村の動きは続いている。この二人が舞台にいるときの奇妙な対比は、なんらかの効果を生むというよりも、そのあともずっと違和感として残り、逆にいえばそれが効果といえば効果なのかもしれない。体を動かす人と口を動かす人の違い、みたいなことで。
    過去の公演のプログラムに載っている作者自身の言葉や、今回の場合は音楽家の高橋悠治の言葉の引用などを読むと、体に染み付いたダンスのテクニックや体の癖みたいなものから離れて、新しい動きを見つけたいというのが神村ダンスの目標のようだ。

    上演時間は約45分。外がまだ明るい昼公演を見る。

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    2009/10/18 10:56

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