『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』 公演情報 DULL-COLORED POP「『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 心が覚醒する瞬間に
    命懸けで挑まれた一ことがひしひしと伝わってきました。

    ネタバレBOX

    開演前、シングルベッドで横になっている男と女。
    ビートルズが流れてる。愛のうた。
    時々キスをしたりじゃれあったりしている微笑ましい関係。
    ふたりはまるで、シド&ナンシー。
    午前5時。男は部屋を出る。
    再生する記憶。

    午前4時48分。
    彼女の心が立ちあがる時刻。
    それから1時間12分間、彼女は正気でいられるという。
    彼は彼女の意識下の一番深いところにクリックする。
    彼女と向き合うために。
    恋人と担当医師を演じることを繰り返し、あらゆる手立てを使って交信するが
    彼女の心はまるでピースのかけたパズルのように、どう組み合わせても完成しない。
    よって、ピースの欠けた部分は彼自身が補うことになる。

    客席に背を向けてデスクに向かいキーボードを叩く男。
    ほほ笑む彼女のポートレートに笑いながらオモチャのピストルをぶっ放す男。
    サイケデリックなグラフィックスが映し出される大型プロジェクター。
    ざらついたロックンロールミュージックを時々、口ずさむ男。
    酒を飲み、精神安定剤を飲み、頭を抱えてうなだれる男。
    すぐにディレートされる、記憶の断片。
    記憶が更新されていくテープレコーダー。
    宙ぶらりんの”わたし”の告白。
    崩壊していくアイデンティティ。

    彼女は彼女自身が納得し、安心できる言葉を捕まえようと試みる。
    彼女は自分自身に出会おうとする。
    彼女は彼女が嫌いだ。
    白い腕に自然な動作で引かれる無数の赤い口紅はリストカットを暗示する。
    自分を傷つければ傷つけるほど、痛みに慣れ、強くなれるような錯覚。
    血で塗り込められていく心の空白。
    彼女は死にたい。
    彼女は生きたい。
    彼女は彼女と対峙する。
    彼は彼女と対峙する。
    彼は彼女を助けようとする。
    彼は彼女を求めようとする。
    彼は自分自身は救えない。
    彼は彼女が投げる走り書きのメッセージを必死に追いかけて掴み取ろうとするが追いかければ追いかけるほど、心理的な距離感はどんどん遠ざかっていく。
    彼らは理解し合うことを恐れ、欲していたが、
    どんなに対話を続けても理解し得ないことを知っていた。
    それでも理解し、愛そうとする彼の熱意が彼女を加速させたのか?
    彼女は光の速さで燃え尽きた。
    恐ろしいほどに美しく。

    彼女の病室のベッドの窓からはうっすらと光が差し込んでいて
    それはとても幸福そうな死に見えた。

    これは、ある男がサラへ宛てた究極のラブレター。
    でたらめに鉛筆で殴り書きしたデッサンがたくさん詰まったスケッチブックをいたずらに交換し合う真剣なお遊び。
    本人ですらどんな思いで描いたのか説明できないようなぼんやりとしたそれらにわたしたちは共鳴し、恍惚し、熱狂する。
    わたしたちはいつまでも彼らの物語を忘れない。
    想いを抱えて、歩いていく。
    そしていつの日か、いろんな色の油絵の具を塗りたくって、ゴージャスな額縁なんかに入れて、誰かのハートに飾るかもしれない。

    0

    2009/10/13 13:51

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大