満足度★★★★★
渾身の舞台!
【心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~】
谷賢一の才能の引き出しはどこまであるのかと恐ろしくなった。この毛色の違う二作品を同時期に演出するだけで気が狂う作業なのに、この作品には自分で主演している。始める前に、いくら谷賢一とはいえ役者としては並だろうと想像したことを謝らなければならない。しっかりと谷賢一にしか出来ない演技を確立していた。お見事だ。
堀奈津美は今回の芝居で一皮むけたのではないかと思う。元々達者な女優だが、自分をさらけ出し、一番醜いところまで見せた上で輝くという最高の演技が出来ていた。
最初から最後まで想像力をかき立てられた。
【プルーフ/証明】
舞台装置はテーブルがひとつ、休憩時間をはさんで2時間20分ののドラマをたった4人の役者で見せる。片時も目が離せない。ひきつけられる。まずその役者の力量にしびれた。ダルカラの大女優清水那保はもちろんのこと、4人とも素晴らしい。名優同士が舞台上で火花を散らすというような芝居。ストーリー展開の面白さもあるが、役者同士の戦いにまず感動した。そう言えば清水那保、つい1ヶ月ちょっと前にマリー・ド・ブランヴィリエ公爵夫人という稀代の殺人鬼を堂々と演じたばかり、その同じ女優が今回は神経質で折れそうなナイーブな女性を、繊細に演じている。どちらも難しい役なのに全身で演じ、自分のものにしている。なんて女優だ。
この公演を最後にDULL-COLORED POPはしばらく活動を休止するという。残念でならない。だがその前の集大成としての舞台に恥じない作品だ。脚本と演出と役者だけで見せる本物のストレートプレイ。渾身の舞台という表現がこれほど似合う舞台はない。