幸福レコード 公演情報 Bobjack Theater「幸福レコード」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    やさしい嘘とはったりについて。
    人間は誰しも自分自身を肯定し、あわよくば人様からも認められたいと願う欲張りで狡猾な生き物です。
    ひとりの青年のモノローグからはじまるこの物語は、人を信じることを忘却した人でなしが、人を信じる気持ちを取り戻すまでの過程が描かれます。静と動。光と影。生と死。弱さと強さ。相反するふたつのコントラストを強調しながらも柔らかな雰囲気が舞台全体に流れるのは、人とのつながりを本当に大切にしたいという気持ちのあらわれではないでしょうか。見終わった後は、何だか無償に誰かにやさしさをおすそ分けしたくなるようなあたたかな気持ちになりました。

    ネタバレBOX

    髪はボサボサ、スエット姿の冴えない作家、宮坂の元を訪れたひとりの青年。
    彼は宮坂に「これはトップシークレットなのだが、あと1年で地球は滅亡する。人々が最後に、幸せだった。と思えるようなハッピーエンドで終わる話を書いて欲しい。5000万円で。」と持ちかける。(実はコレ、宮坂を苦しめるために青年のついた、ビッグジョーク)
    自分には秘密にしているが、奥さんが妊娠していることを知っている宮坂は、
    破格の報酬に目がくらみ、ふたつ返事で承諾するが中々思い通りに書けない。

    時同じくして、青年はある女の子に出会う。彼女はセツナといい、重い病気をわずらっていて、そんなに長く生きられないが、明るくてやさしい女の子で”幸せ”を集めている。
    彼女はボイスレコーダーを持ち歩いていて、
    「あなたの幸せは何ですか?」といろいろなひとに聞いては録音している。
    たくさんの幸せをあつめたら幸せになれる気がするから。なんて言いながら。

    自分にはないものを持っているセツナにだんだん心を開いていく青年。
    自分には幸せなんてない。と言う殺伐とした青年にある日、読んだらとても幸せな気持ちになれる本があるので読んで欲しいと言って彼女が持ってきたのが宮坂が書き、12年前に書籍化された唯一の本。
    実は青年は、宮坂が本を出した出版会社の息子で、父親が数年前に自殺をした父のすぐそばには宮坂の書いた本があり、宮坂のせいで自分の父親は死んだと信じ、宮坂を心から憎んでいる青年はセツナの好意を跳ね返し、彼女が持ち歩いていたボイスレコーダーを壊してしまう・・・。

    そしてセツナが危篤に陥っていることを知った青年は、
    「あなたが幸せになることが私の幸せだ」とセツナが言っていたことを思い出し、宮坂の元を訪れる・・・。(この後は劇場にてご確認ください)


    補足:
    宮坂と奥さんの住んでいる四畳半フォークソングが似合いそうな和室が舞台の中心に配置され、上手と下手を使って青年とセツナの話と、宮坂の友達の売れない作家(宮坂に金を借りに訪れる&ウクライナへ逃避する予定)とホステス(元同級生)の3つの話がほぼ同時に進行していきますので誰にスポットを当てて観るかによって、印象は大きく異なると思われます。(ちなみに私は、青年にスポットライトを当てて鑑賞しました。)

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    2009/10/09 16:10

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