コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ 公演情報 Bunkamura「コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    9時間の大作!渋谷で今ロシア思想家の芝居を打つ意味。
    蜷川さん、今度は9時間に及ぶ大作です!
    通し券で三部作を一気に観ました。
    12時開演、終わったら22時20分、こんなの初めてですが、
    こういうイベント性が高いのも楽しいですね。

    舞台は、囲み舞台。
    開演前のお客さん入れの時間から、舞台上には
    出演俳優さんが稽古着姿で並び、
    長めの会議テーブルを囲んで談笑…。
    本読みでも始まりそうな稽古場風光景。
    ほんの目前に、大物さんたちが大挙して並ぶ様は圧巻です。

    しかし、開演と同時に、
    舞台の周りを瞬く間に紗のかかった半透明のカーテンが覆い、
    現代の街の雑踏の音が大きくなり、出演者はカーテンの中で
    衣装をつけ、道具も設置されて、次の瞬間、舞台上は
    一気に1833年のロシアに飛ぶ。
    この展開、この演出にまず驚かされました。さすがです。
    蜷川さんはよく、この渋谷で若者たちのいるど真ん中で
    芝居をする意味を話されてるので、現代と歴史を結ぶ
    演出を常に考えられているのだと思います。
    そして、渋谷で今、ロシアの思想家たちの長時間に及ぶ
    芝居を打つという意味を考えさせられます。

    メインの話は、阿部さん演じる思想家と勝村さんの革命家
    を中心に集まるロシアの現代・未来を憂う人々。
    名門貴族の家族、革命家、詩人、哲学者、評論家たちが
    海外へと転々とし祖国を案じながらも、それぞれの人生を
    生きるまさしく大河ドラマのよう。
    特に阿部さんのパワーは圧巻です。
    しかし、私としては、文芸評論家ベリンスキーを演じた
    池内博之さんの貧しく不器用ながらも、必死に自分の考え
    を説き生き抜く姿が素晴らしかった!
    また1部、家族、兄弟姉妹もその思想に影響されながら、
    時にはかわいらしく夢見て、時には必死に生きる姿も心に残ります。

    彼らの人生の様々な逸話やその年月の流れは、
    まさに長編でしか味わえない。
    何度も休憩があり席に戻ると同じ世界に浸れる、
    何度も舞台上の世界に帰ってくるような感覚。
    俳優と観客が、足掛け10時間以上も劇場内で同じ時間を
    共有する楽しさを十二分に堪能しました。

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    2009/10/09 11:35

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