実演鑑賞
満足度★★★★
単純に大企業の歯車より起業しろ、安定よりリスクをとれという話かと思うと、さにあらず。なかなか複眼的で説得力のある見方を提示していた。今回は、マルチエンディングという手法。前半と後半があり、主人公の決断の違いによる、後半2パターンの両方を舞台で演じる。ゲームにはよくあるが、演劇で見たのは初めて。(先日みたマックス・フリッシュ作「バイオ・グラフィ:プレイ」は芝居による人生のやり直し、という枠組みで、これに類することをしていた)
海洋プラ100%でつくる新ブランドを部長につぶされた主任が、社内に残って臥薪嘗胆する第一のパターンと、起業して単身雄飛する第二のパターン。二つのパターンが微妙に相似形になったり、しゃれた形だった。知的にスマートであるとともに、次女の「安定した生活はなによりのぜいたく。それがなき母の教え」を信奉するかたくなさや、俗物部長のいやらしさといったドロドロした味もある。
会社を退職して競合ブランドを立ち上げた主任(川田希=好演)を、元部長(谷仲恵輔=吉田茂役が懐かしい)が腹いせに露骨につぶしにかかる。銀行マン(芦原健介)が「コンサルタントとマッチングで融資先をういんういんに。これが倍返し、バンカーの信念です!」などと中小企業の強ーい味方だったり。キャラの善悪を固定化して物語をすすめる、漫画的なところがあるけれどご愛敬である。銀行マンにはユーモア、ギャグもあるし楽しめた。
ただ、大きく段差を設けた舞台の、奥の一番高い舞台が客席から少し遠いのは残念だった。2時間10分