JACROW#28『鶏口牛後(けいこうぎゅうご)』 公演情報 JACROW「JACROW#28『鶏口牛後(けいこうぎゅうご)』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    企業ものとか、政治ものとか、現実ベースの素材が特徴のJACROW、作劇はずいぶんうまくなって、今回はアパレル企業の経営方針をめぐるドラマを、テンポよく見せてくれる。製品に環境問題をかませているあたり工夫もある。
    だが、この劇団の企業もの、何時も、どこか作り物めく。
    それは、多分、作者が『会社』と言うものは「法人」で人と同じような扱いができると思っているからではないだろうか。会社同士の葛藤は、ほとんどすべての場合、「利益」で左右されるもので、人の感情が入らないのが普通である。それは法もそのように規定しているからで、利益を求めなければ会社の責任者は背任の責めを負うことになる。
    このドラマにはいかにも経営者の言いそうなことが、数々ドラマチックに出てくるが現実に経営に関わってみれば、会社の大小、事の成否を問わず、それは結果に対する建前のきれいごとにすぎない。つまり、この辺が嘘くさい。現実にこんな下請け製造業者の部長や取引銀行員が出てくるとは思えないからである(現実の葛藤さまざまで、こんな風に騎士風には登場しない)。会社と人間の倫理を合わせるために家族構成もご都合主義になってしまう。
    しかし、企業興亡のドラマとしては面白くできていて、主演の川田希は熱演だが、テレビドラマの松たか子(大豆田とわ子と三人の元夫)ほどのリアリティもない。
    数年前になるが、同じこの劇場で「男たちの中で」と言う海外の企業ものを見たことがある。海外の話だが、こちらはずいぶん陰惨な話なのにリアリティはあった。その一つは、この鶏口牛後は、視点を客観に置いているが、男たちの場合は一つの経営者家族の葛藤に置いているからだ。会社の経営は、なかなか客観に引いては見られないもので、すべてがケースバイケースだ。視点を踏み込んでいくともっとリアリテイが出てくると思う。

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    2022/06/29 10:35

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