実演鑑賞
満足度★★★★
本作初観劇。誤解を恐れず言えばストーリーは何でも良い。瞬間の煌きが唐十郎@梁山泊の真骨頂。
六平直政の古巣での出演は30年振りなのだとか。パンフに熱っぽく書かれていた六平氏の文字は、劇団を出て羽ばたき続けてきた自分の視界に、雲間から顔を出す劇団の姿を見出したという趣旨を述べていた(高みから下りてきたのではない、という意味を込めたかったのだろう)。彼は三幕にようやく「お市」という風俗(おかま)の元締めとして女装で登場し、長口上を言うのだが、不思議な感覚であった。爆弾キャラでハチャメチャに掻き回す光景を想像していたが、意外に折り目正しく繊細である。
一方の見どころな役は、ヤクザな界隈の手練れ共の手を逃れて健気に生き抜こうとする元娼婦(蜂谷眞未)と若者二人(中嶋海央・二条正士)の三人組(唐組で観た「黄金バット」にもあった“3”のチーム感がいい)。ヒロインの蜂谷は「娼婦・奈津子」で度肝を抜く存在感を見せたが、通じる役で今回も圧倒した(見事というしかない)。常連の大鶴氏、松田氏他の面々、また紅日女史が五人の女性コロスの一人に収まっているという贅沢な陣容。役者一人一人、隅々までポテンシャルが高く、もしやこれも六平効果か...? とふと思った。