もんくちゃん世界を救う 公演情報 U-33project「もんくちゃん世界を救う」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    お伽噺 桃太郎をベースにした寓話のようだが、話の展開は違うもの。何方かと言えば現代的な問題を前面に出し模索若しくは自省しているよう。しかし、まぁ理屈で考えるより観たまま素直に受け止め、楽しみたい作品。

    「文句」という感情を切り口にして、発想の転換によって思考や物の見方が変わる、といった内容がストレートに伝わる。訴えたい内容は分かり易く、更に視覚的に面白可笑しく観せる演出の工夫、そして主人公もんくちゃん役の ゆでちぃ子。 さんの独特の雰囲気、それら全体をもって物語の世界観を醸成している。
    さて、もんくちゃんが言うところの「世界を救う」とは…。
    (上演時間1時間40分 途中休憩なし)6.26追記

    ネタバレBOX

    舞台セットは、奥を一段高くし、色違いの箱馬が置かれている。中央に花道、冒頭は桃の張物がある。上手 下手は敢えて非対称の張物絵柄。上手正面は雲、側面は高層ビル群、下手正面は太陽、側面は大木が描かれている。因みに箱馬の色は青と赤であり、格闘技のコーナーを表しているよう。

    物語は、ストーリーテラー(絵本の読み手のよう)が話を分かり易く案内してくれる。おじいさんと きくちゃん(おばあさん)が、仲良く暮らしていたが、長年一緒にいれば喧嘩することもある。つい強い口調で詰ることもあるだろう。おじいさんは「文句」を別の言い換えが出来ないか考える。そこで知り合った もんくちゃんに「文句」集めを依頼する。斯くして もんくちゃんはピンクの上着を着て街に出かける。街には相手の意見に逆らえない人(犬井)、自分の考えがなく、言いなりになる人(猿渡)、誰とも関われない孤独な人(雉谷)がおり、その3人が抱えている心の問題が見えてくる。一方、鬼と称される人達は、高圧的に命じる(青鬼)、情実に訴え言いなりにさせる(赤鬼)、そして無視を決め込む両鬼として対峙(退治)させる。この構図は、社会問題にもなっているハラスメントを表している。それぞれの立場を鮮明にした戦い(ディベートみたい)が始まる。この時の観せ方が面白可笑しく秀逸だ(カーテンコールで表現に注意してとあり)。

    ハラスメントを受ける人たちの特徴、文句を言われ傷つきたくない、優しいだけで自分の意見が言えない、自己表現せず自分の殻に閉じ籠ってしまう。「文句」=「意見」に置き換えることで違った印象を相手に持たれる。発想の転換によってネガティブがポジティブへ、といった表現が…。しかし行き過ぎた正論もまた怖い描き方をしている。鬼退治=仕返しが出来たことによって、今度は逆に苛めの側に立つ。負の感情の連鎖は止まることを知らない、人の弱さを露呈する。単純に「文句」を「意見」に置き換えただけでは世界は救えない。しかし意見を言わなければ、世界が(何事も)変わらないのも事実だ。「世界の終わり」を「世界を救う」へ導くことは並大抵のことではない。その問題を観客に投げかけているようだ。

    演出は全体的にポップで、時に漫画調になる。描かれている内容は重く厳しいものであるが、そこは上手い演出とキャスト陣の演技で楽しんで観ることが出来る。公演は絵本と異なり、ストーリーテラーがもんくちゃんの代わりとして、物語に入り込む。困ったら他人に押し付けてしまう、そんなもんくちゃんの弱さを描くことも忘れない。
    先の演出と相まって童謡 唱歌「桃太郎」が実に効果的な音楽として流れる(ピアノ)。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/06/25 16:04

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