ナイゲン(2022年版) 公演情報 Aga-risk Entertainment「ナイゲン(2022年版)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    閉じられた空間、時間の制限、決定方法等の設定は、法廷劇「十二人の怒れる男」を連想させるが、劇中で議論される「模倣」か「原作」かで言えば、「ナイゲン」は間違いなくオリジナル学園会議劇の秀作だ。因みに劇中比べたのは「ロミオ&ジュリエット」と「ウエスト・サイド・ストーリー」で、あまりにも有名な話。

    「理屈」と「感情」を較べてみれば、感情が先走ってしまう会議。公演の議論はあちらこちらに漂流し何処に辿り着くのか分からない面白さ。それでいて会議全体の流れは分かり易いといった印象であるから不思議だ。また、当初 印象が薄くあまりやる気が感じられなかった議長がその責務を果たそうと…その成長譚が清々しい。文化祭を取り仕切る内容限定会議ーーナイゲンは表層の面白さだけではなく、そこに潜む会議体や民主主義の問題を考えさせる。
    今の世界情勢を鑑みれば、”話し合うこと”の重要性は明らか。再演のタイミングがピッタリだ。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    セットは当初、授業形式に並んでいるが、会議が始まるとロ字型へ変形させる。会議劇だから当然であろう。また、上演時間とナイゲン討議時間(開演直後、下校2時間前に時刻を合わせる。16:35~18:35)に重ね合わせて臨場感を持たせる。客席は三方向に設え、観客には会議の立会人のような緊迫感が生まれる。
    内容限定会議(通称:ナイゲン)は、県立国府台高校 文化祭”鴻陵祭”における各参加団体の発表内容を審議する場であるという(文化祭規約)。規約が”自主自律”の精神に則っている。この規約が掲載された「内容限定会議資料」(劇中使用と同様)が観客にも配付される。すでに参加団体の催し内容も確認したところに、学校側から「節電エコプログラム」の催しを押し付けられるが…。

    発表内容に関する指摘、恋愛(痴情的)感情、上級学年優先や 何となくなど、意味不明の理由まで飛び出し議論は漂流し続ける。始めの理論武装された議論から感情優先のドタバタコメディへ…。いつの間にか文化祭全体会議からクラス代表の顔になっている。下校時刻が刻々と迫ってくる。そんな中、演劇の上演許可を得ていないクラスがあった。ナイゲンの議論は、如何にこのクラスが主体的にエコプログラムを受け入れるか、という話へすり替わっていく。自主自律の精神に沿わせようとするもの。
    教室から出られないという密室状態、しかも会議時間が限られているという空間と時間の制約に緊張が生まれる。テンポ良く、また疾走するような会話劇は、立会人的な観客も固唾を呑んで見守っている感じ。会話劇だけに登場人物のキャラクターや立場などが観(魅)せられるか。その演技は笑い、罵倒、落胆など様々な感情を実に上手く表現している。
    アガリスクエンターテイメントでも何度も再演されており、他劇団等でも上演されているが、個性豊かな登場人物を演じるキャストが変われば劇雰囲気も変わるだろう。内容の面白さは勿論、キャストによって違った印象になるから、何度観ても飽きることはない。

    各クラスの発表内容の審議結果を多数決(民主主義的な)で決める。討議では自分の考えを訴えつつも相手の言い分も聞くという態度が大切。物事を決める熟議のプロセスを重視している。意見の一致も大切だが、一人ひとりが違った見方で世界を見ることで世界はまともな形で存在するかも。芝居ではこの役割を3年3組_どさまわり(古谷蓮サン)に担わせている。にも関らず、全体討議終了後の採決は全会一致の承認が必要であると…そうであれば議論の過程の多数決は何の意味があったのだろうか、という疑問が生じるところ。
    会議後、2年のアイスクリースマス(木村聡太サン)が古谷さんへ何か(本当にこれで良かったのか)言おうと口ごもる。また花鳥風月(神山慎太郎サン)が将来に向けて、皆がやりたがる「エコプログラム」を創作すると…。真に問題が解決した訳ではなく、会議内容の真価はこれから問われるのだと暗示している。実に深い余韻を残しており見事!

    日本における日本国憲法の自立とそれ以外に働く力の関係を連想してしまい…表層の面白さに潜む重厚なテーマ、実に観応えがあった。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2022/06/24 16:46

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