らくご芝居~「丹青の花入れと水屋の富」より~ 公演情報 ThreeQuarter「らくご芝居~「丹青の花入れと水屋の富」より~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    公演は、Three Quarterが他劇団や客演とのコラボレーションを前面に出した企画「Mixing(ミキシング)」、その第1回目が深川とっくり座とである。深川とっくり座公演は、過去に2~3回観ている。今回の演目は、深川とっくり座でも上演しているようだが、自分は観ていない。ただ何となく、深川とっくり座の劇風が全面に出ており、今まで観たThree Quarterの公演、例えば、つか こうへい作品とはまったく異なる劇風となった。その良し悪しは別にして、「素敵なご縁から、いろいろな方々と触れ合いごちゃまぜ(ミキシング)したら何ができる?」という 挑戦する姿勢は大切であろう。

    今回は敢えて、深川とっくり座の「古典落語を基にした、笑いあり、涙あり、観たあとは心がほっこりするお芝居」の特徴を取り込んで、社会人劇団としての幅を広げようとしたのだろう。しかし、本公演のように丸呑みした内容では、和の所作一つとっても一日之長がある深川とっくり座には及ばない。コラボレーションすることで、Three Quarterらしさプラスαを求めるのではないか。その意味で、手放しで良かったとは言い難い。Mixingとは、更なる独自色を探る企画であろうから。ただ、個々人の演技力向上には役立ったかもしれないが…。

    演目元は、古典落語の「花瓶(しびん)」と「水屋の富」を 深川とっくり座 座長の ひぐち丹青氏が脚色した、2本立てのお話。なお落語と違い、演劇は視覚によって感性が左右(影響)されることを改めて知った。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)【鶴組】

    ネタバレBOX

    舞台セットは、障子戸や箪笥を描いた張物で情景を表した簡易なもの。これも深川とっくり座と同じ様。ただ 深川とっくり座は深川江戸資料館小劇場という少し間口の広いところで上演しており、この空間の違いが劇の印象を異にしている。
    なお、コロナ禍ということもあり、舞台と客席の間隔(2m以上) さらに上半身以上の高さにアクリル幕を設け、感染防止対策に努めている。
    さて、物語は…。

    「花入れ」=(花瓶<しびん>)
    時は江戸時代、華道の花小路流の家元桜子は、庶民ならば自分のことは知っているという不遜な態度、その実、物事を知らない無茶ぶりが面白可笑しく描かれる。ある日、弟子の捨松を連れて入った道具屋で珍しい花瓶と運命的な出会いを果たす。その花瓶は、近所のご隠居が使用していた尿瓶。変な理屈をつけて形や色合いが気に入ったようだが、道具屋夫婦や捨松は勧めないが…。
    「知る者は言わず、言う者は知らず」、いわゆる 知ったかぶりを揶揄するような噺。

    「水屋の富」
    長屋の住人で水屋を営む熊五郎とおしま夫婦が主人公。富札が当たったら大盤振る舞いすると話す熊五郎、そんな 捕らぬ狸の皮算用で盛り上がる長屋住人。しかし最近二人の様子がおかしい。二人を心配する周りの人々。また「雲隠れの駒」なるスリを追う親分も現れ長屋は大騒ぎ。実は富札が当たり、留守にも出来ず 厠へも行けず困っている。さて、近所の出産の手伝いに出かけた留守に…。
    嬉しい筈の大金が不安の種、しかし盗まれて不安から解放されるという皮肉な結末。お産という人情を優先する江戸庶民の仄々とした味わい深い物語。
    ただ両物語とも、落語オチの印象が弱く流れた感じ。

    演目元は落語噺…表層的には面白可笑しく描かれている。江戸庶民の暮らしぶり や 人情が伝わるが、その域を出ていないのが勿体ない。せっかくMixingならば、劇団の特色を織り交ぜたらと思う。当日パンフにも、劇団は「つかこうへい や時代劇のイメージが強いと思います」と記しており、例えば、つか作品であればメッセージ性が強く出ている。
    上演後、観客から「(水屋の富)…あの金(千両)はどうなったのかな、中途半端でないの?」といった声が聞かれた。現代は「落語噺のオチ」だけではなく、現実的な問題への関心が強いのではないか。人情に厚い人が、長屋住人への疑心暗鬼で不安になっていた現実(皮肉)も見える。

    古典落語の題材を大切にしつつ、現代的(メッセージ性)な観点を盛り込んで観(魅)せる工夫が必要ではないか。同時に、芝居は視覚で観せており、噺を聞いて想像することとは少し違う。深川江戸資料館小劇場に比べると狭く、長屋住人や親分までいたら、ごちゃごちゃし過ぎ。観せる工夫も必要だと思うが…。
    次回公演を楽しみにしております

    0

    2022/06/19 18:30

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大