ゴンドラ 公演情報 マチルダアパルトマン「ゴンドラ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い…お薦め。
    観覧車「ゴンドラ」を人生に準えた台詞があったが、公演そのものが観覧車の「ゴンドラ」らしい展開だ。観覧車は一定の速度で動くが、物語は ぎこちない、激高 激情、そして余韻ある会話といった緩急をつけて観客の関心を惹く。登場人物は3人、コロナ禍での三密は避けたいが、物語は濃密・親密そして緻密に描いており実に巧い。

    4キャスト(赤い・青い・白い・黄色い)パターンあるが、多分 異なるそれぞれの空気感を漂わすのだろうな、と思う。この会場の至近距離での演技は、役者の外見も含めた雰囲気で異なって観えるだろう。そこがこの公演の魅力の一つでもあろう。
    (上演時間1時間20分)【白いゴンドラ】

    ネタバレBOX

    舞台美術は、地方のアパートのダイニング又はリビングで、テーブルと椅子があるだけのシンプルなもの。しかし上手に風呂場や玄関(チャイム)、下手奥には父の部屋があることが容易に想像できる。全体的にオフホワイトで、照明の照射によって椅子がゴンドラに見えてしまう。人物が座った後で、椅子が少し動いても映り込む陰影は変わらないよう。仕込み陰影であろうか。
    また時間の経過は、登場人物の衣装替えや 照明の変化で表しており、効率的・効果的な演出は やはり上手い。

    物語は、説明の「過去に囚われて身動きが出来なくなってしまった者たちが、不器用すぎる対話の果てにたどり着いたのは・・・」の続きが肝。東京の会社を辞めて地元に戻ってきた男・孝介(久間健裕サン)、孝介の父の訪問介護ヘルパー・遥(冨岡英香サン)、孝介の嫁いだ妹・朱音(元水颯香サン)がそれぞれの事情を抱えながら、日々を過ごしている。孝介は遥に淡い恋心を抱き、デートに誘うまでの ぎこちない会話。朱音と孝介は、働かず父の面倒も遥に任せている兄を心配しつつ呆れてもいる。遥と朱音は、子育てや、恋愛観に話の花を咲かす。三者三様の演技・表情が物語をグイグイ引っ張っていく。特に朱音の泣きの演技は迫真もの。
    さて、いくつか分からない部分、例えば孝介が何故 東京の会社を辞めたのかなど、曖昧な設定がある。しかし敢えて人物の詳細事情を明かさず、今という状況の中で紡いでいる。それがラスト、過去に囚われに繋がる緻密な構成になっている。

    物語は、観覧車のゴンドラという狭い空間を家のダイニング等に重ね、逃れられない場所に居続ける。まさしく(家庭)内ばかりを見れば囚われの人生のよう。一方、外を見れば見渡す限りの光景に心躍るはず。視点を変えることの面白さが伝わる。
    同時にジェットコースターのような展開がドキドキ感を煽る。孝介が遥に恋心を打ち明け、デートへ誘うまでの微妙な距離感と ぎこちない会話は、ジェットコースターがゆっくりと上る様子、一転 親しくなって 遥自身のこと、その家族のことを知ることで急降下、一気に加速する物語。芝居の緩急ある展開は、観客の関心を一気に惹きつける。
    「観覧車のゴンドラひとつひとつの中でどんなドラマが繰り広げられているのか知る由もないように、ここでもあなたの知らない誰かの人生は静かに回る」は実に意味深な説明文であった。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2022/06/18 11:33

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大