トラベリング・オン・ザ・シャーレ 公演情報 カムヰヤッセン「トラベリング・オン・ザ・シャーレ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    面白くなりそう
    だった。

    話は、比較的よくできているし、演出の手際もいいと思う。
    ただし、スピーディさがあればもっとよかったと思うし、メッセージ部分のクローズアップが足りないように感じた。

    ネタバレBOX

    最初のほうで、「ウイルスによる病気のワクチンを、誰がつくったのかを知りたい女医が、時間を遡り過去行く話だ」ということがわかってから、まさか、それってこんな安直な話ではないだろうなぁ、と思った通りのストーリーだったのがちょっと残念。
    つまり、そのワクチンを作ったのは、過去に行った自分(女医)だったというストーリーだ。

    ストーリーそのものよりもそれを繋ぐエピソードや演出に面白みがあるのかと思ったのだが、もうひとつ残念な感じだった。
    (たぶん)笑わせようとしているところではあまり笑えず、感動させようとするところは、長いと感じてしまった。
    例えば、主人公の女医が死んで、そこで看護士の独白があるのだが、いろいろ盛り込みたいのはわかるけど、その台詞が長すぎて途中で飽きてしまった。

    さらに、その看護士の現在である老人を、妹が迎えに来るというシーンがラストにあるのだが、これってこの場所なの? と。
    家族の再会、再生なのかもしれないが、彼があまり話の中心に位置づけられていないからそう思ってしまったのだ。

    この話のキーとなる、ウイルス性の病気(あきらかにハンセン病を下敷きにしているような印象)に罹患した者は、人間性を否定され、医学が追いつかないことで、迫害を受けたり、誤った治療をされてしまう。
    過去に行った女医は、過去と未来を知っているからこそ、過去の病気への対処方法や患者の扱いに、苦悩や憤りを感じる。
    その死に至る病に、人はどう対応するのか、という個々のケースを見せているのだろう。

    中でも重要なのが、病気になり、看護士となる男だろう。彼は、病気になり、家族から離され、去勢という治療をされてしまいながらも、ワクチン作りに手を貸し、生き延びる。さらにラストのシーンに繋げるためにも重要な役どころなのだ。つまり、彼のエピソードや彼そのものを、もっと印象的に見せるべきだったのではないだろうか。

    確かに、蒲鉾会社の社長と秘書のエピソードや、怪しい宗教を信じる患者と教祖の話も人間臭さがあるのだが。看護士になる彼のほうに観客の意識が集まるようにすべきではなかったのだろうか。

    老人も、もちろん現在の看護士なのだから同様に重要だ。過去の彼(病人で看護士)と現在の彼(老人)とのギャップをきちんと描き、それが徐々に同一人物であるということが明らかになりながら、そのギャップを埋めつつ、交差していくように描けば、あの再会のラストの場所、その位置づけも明確になったと思う。
    この場合、主人公の女医は、ある意味狂言回しなのだから。

    一番気になったのは、ハンセン病に対する反省もある2009年(この舞台では過去の時間)に、どんな病気であれ、病気にかかってしまった患者の名前を変える、なんて扱いが起きるとは思えないのだが。

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    2009/09/05 02:21

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