ひび割れの鼓動-hidden world code- 公演情報 OrganWorks「ひび割れの鼓動-hidden world code-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

     真っ黒な空間に、大きな白い布に覆われた大きなステージがあります。よじ登るのに少し苦労するぐらいの高さがあり、パフォーマンスは主にその上で行われます。ステージの周囲にはまばらに、細長い白い棒が数本、刺さっています。棒高跳びの棒のような長さで、白樺の木々のよう。卒塔婆に見えなくもないです。

     白いコートを羽織る俳優2人(薬丸翔と佐藤真弓)は言葉を使います。その他のダンサーたちの衣装は体にややフィットするデザインで、色合いは淡い灰色のグラデーションです。彼らは無言でした。言葉を操る人と体を操る人という2つのグループに分かれているように見えました。

     当日パンフレットに、振付・構成・演出・出演の平原慎太郎さん、テキスト・ドラマターグの前川知大さん(イキウメ)の文章が掲載されており、今作のテーマである「コロス」の解説もありました。顔写真入り、プロフィールありの出演者紹介ページもありがたかったです。

    ※劇場ロビーで制作さんが私の足に気づいて(びっこを引いていた)、移動しやすい席に変更してくださいました。もう…涙出そうだった…。ご親切に感謝いたします。本当にありがとうございました!シアタートラムがもっと好きになりました。

    ネタバレBOX

     6つのチャプター(章)から成る作品で、チャプターごとに題名がついており、字幕表示されます。俳優2人は会話をしているようですが、どこで、何のために、誰に向かって言葉を発しているかが不明瞭なことが多かったです。どこかの曖昧な対象に向かって投げかけられて、そのまま消え入ってしまいそうな言葉が浮かんでいました。相手に向かって話しているように見せかけた独り言のよう。彼らの所在なさげな姿もその印象を強くしていたかもしれません。空間は閉じていないのに、逃げ場のない窮屈さを感じました。

     ダンサーの振付は見た目の美しさを目指すのではなく、互いの存在を確かめ合うために手探りをする過程を、そのまま見せるような印象がありました。俳優とダンサーの存在の仕方が私にはまるで違うように見えており、触れ合ったり、アイコンタクトを取ったりしていても、それぞれが別の世界の住人のままで、この演出の意図しているものが何なのかを探りながら観続けることになりました。

     「chapter 4」のステージの下で踊るデュオ(東海林靖志&高橋真帆)がとても刺激的でした!誘い合っているような、戦っているような…敵か味方か判別のつかない関係性がスリリングでかっこよかったです。高橋真帆さんは視線に力があり表情も豊かで、目が奪われました。

     終盤に入り、俳優に応える形でダンサーがセリフを発した途端、ダンサーたち全員がいわゆる「コロス」に見え始めました。サスペンス・ドラマの謎が解けた瞬間のような高揚感があり、束の間の祝祭ムードも感じました。
     ステージが布に覆われていく様子は何かを葬っているようで、積み重なっていく地層を想像しました。

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    2022/06/01 13:56

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