オロイカソング 公演情報 理性的な変人たち「オロイカソング」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

     上演時間は約1時間50分。終演後に「CoRich舞台芸術まつり!2022春」最終選考対象作品であることの紹介と、「こりっちにクチコミしてください」というアナウンスあり。ありがとうございます!

     小さなカフェのような空間での、5人の女性俳優によるお芝居。フル稼働状態の俳優のアンサンブルを、ほぼかぶりつきで観られるのは小劇場の醍醐味です。しかも皆、演技が達者ときた!幸せ!
     
     20代後半の女性・結子(滝沢花野)は10年前から音信不通になっている双子のかたわれ・倫子(西岡未央)を探して、ライター・カメラマンの女性ルーシー(万里紗)を訪ねます。双子と、その母・弥生(佐藤千夏)と、双子と弥生を育てた祖母・オト(梅村綾子)の生活を回想し、倫子が抱える秘密がやがて明らかになります。
     
     双子を演じた滝沢花野さん、西岡未央さんは1人の女性の幼少期から思春期、そして成人後を演じ分けます。役の成長による変化のグラデーションがきめ細やかで、それぞれの時代の双子の気持ちを信じられました。
     心の傷は怒りをともなって、倫子を突き動かしていきます。西岡さんは秘めたマグマを想像させる冷静さにリアリティーがあり、やがて暴発にいたる経緯に切実な痛みを感じさせてくれました。

     お芝居全体については少々雑然とした印象があり、進行に危なっかしさを感じたところもあったので、欲を言えば、いつか同じメンバーで上演を重ねてもらえたらいいなと思いました。
     終演後のロビーでは作中人物(倫子)が製作したとされる作品(動画)を販売していました(通常1000円のところロビーでは500円)。希望者へのコンドームの配布もありました。

    ネタバレBOX

     舞台奥に組み立て式の簡易家具が並べられており、テーブルや椅子を移動して場面転換します。俳優はほぼ出ずっぱりで、さまざまな役を演じ分けていきます。出番ではない時は舞台面側の上下(かみしも)にスタンバイ。衣装はデザイン違いの白色で統一し、たまに着替えます。日常生活を自然に再現したり、敢えて大げさな演技で戯画化したり、回想場面を眺める人物がいたり、観客に話しかける場面があったり。演技の種類はさまざまで、演じ分けも含め、切り替えが早いです。

     舞台は妊娠、出産、子育て、家事を女性が担うのが当たり前という認識がはびこっている日本。昭和から令和にかけて、双子の女児(結子と倫子)とその保護者(母と祖母)という三世代の日本人女性の半生をたどり、日本に暮らす女性が受けてきた差別、強いられた無償労働の実態を、現代とつながる形であぶり出していきます。

     シングルマザーの弥生は貧困ゆえ労働時間が長く、祖母・オトの力を借りてしか、双子を育てられませんでした。上司に誘われた飲み会を断れない、働きづめの弥生は男性会社員とも重なりますが、彼女は女性だから昇進できません。もともと、弥生はオトの姉が産んだ子で、姉が死んだためオトが引き取って一人で育てました。母子家庭が二世代続いたんですね。

     倫子は幼少期に中年男性から性的虐待を受けて、人生を狂わされてしまいました。彼女の成長を追っていくことで、性暴力サバイバーの筆舌に尽くしがたい苦悩が伝わります。性暴力への無理解、被害者への二次加害等に立ち向かっていくノウハウを、「プリキュア」の戦闘場面にしつらえて紹介するのが面白いです。重いテーマをなるべく軽快に伝える工夫が効果的でした。

     成人女性が「プリキュア」のコスプレ(衣裳は手作り感あり)をしてシャカリキに頑張る場面は、笑いを狙ったものだと思いますが、心の傷から噴き出し続けている血を、道化を演じることで隠しているようにも見えて、涙が出ました。「戦隊もの(紅一点の女性はピンク色の衣装で、男性の補佐的な役割)」を見て育った私と、女の子ばかりの集団が活躍する「プリキュア」を見て育った若い世代とでは、見えている世界が違いますね。
     ※「戦隊もの」と「プリキュア」の間に「セーラームーン」世代もあり、また違うらしいです。

     結子は植物が好きで、種を育てる仕事をしています。彼女は、女ばかりの4人家族は花瓶に閉じ込められているようだったと回想していました。花瓶に活けられた花に自由はありませんよね。舞台面側に、造花を挿した花瓶(たぶん5つ?)が横一列に並べられていました。最後の場面では、俳優たちが花瓶から花を1輪ずつ取り出し、思い思いの持ち方をしていました。花瓶から飛び出し、地面に足をつけて根を張って、それぞれが自立して生きていく姿を見せたのだと思います。

    ※長い目のあらすじはこちら↓に書きました。
    https://shinobutakano.com/2022/05/31/20049/

    0

    2022/06/01 13:54

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大