孤という毒 公演情報 獏天「孤という毒」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    明日で50になる元刑事、今は自殺防止センターで夜勤。追い詰められた見知らぬ老若男女達と、受話器一つで向かい合う。妻は男を作って出て行き、17の娘はニ年前に家出して失踪。カップ焼きそばが御馳走で、独りで好きな曲を熱唱するのが大好き。自殺を思い詰めた人間がふと脳裏を掠めた気分でダイヤルしてくる。その微かな“生”への渇望の欠片を嗅ぎ分け手繰り寄せていく作業。

    亀石太夏匡(かめいしたかまさ)氏、これが初舞台とは本当なのか?ルックスからも演技からも自信が満ち溢れている。歌もやたら上手い。玉置浩二の『メロディー』なんか素晴らしい。
    全く退屈とは無縁。舞台上は一人だが受話器越しに声の出演者が複数。映画の脚本家を目指していただけあって、映画的な仕掛けに充ちている。良い台詞が沢山あった。
    「本当に孤独でないと死ぬ資格はない。」
    「全部捨てちまえばいいじゃないですか!」
    「正しくなくてもいいじゃないか!」
    自分が自分を苦しめていることに気付かなくてはいけない。
    今、凄く心が弱っている人にお薦め。

    ネタバレBOX

    3人目の電話から一気に話は映画的に。言葉を口に出そうとしない相談者。受話器を指でコツコツ叩く音だけが響く。モールス信号かと思ったがそこまで複雑なものでもない。「はい」(1回)と「いいえ」(2回)の合図だけを勝手に決め、無言の相手に向かって亀石氏は喋り続ける。自分の半生、トラウマ、悩み、苦しみ、不安、葛藤、孤独、迷い・・・、堰を切ったように怒涛の言葉と感情が氾濫し狭い室内を浸していく。凄い熱気、これを観れただけで充分。

    亀石氏の父は東映ニューフェイスの亀石征一郎。盟友伊勢谷友介と映画を製作し、「社会貢献に繋がるアート」を理念に掲げた会社も立ち上げている。

    凄く心に響いた独り芝居。それでも自殺する者もいる。自分は自殺は否定しない。スタークラブの名曲、『THE LAST RIGHT(最終権利)』の通り、それも選択肢。西部邁が『死生論』で予告していた通り自死を選んだように。

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    2022/05/19 15:28

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