ベイビ- ドン クライ  公演情報 東京ハイビーム「ベイビ- ドン クライ 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い!
    表層的には笑わせ続けるノンストップコメディであるが、内容的には奥深い物語だ。
    偶然であるが、前日に観劇した公演に出てくる絵本(「タイトル」はネタバレBOX)に通じる。この公演は「サダオシリーズ」の新作5、6の連続上演で、「喪失と再生」の話になっている。そして説明にある「預かったモノがある、それを伝えるために来た・・そして訪れる絶体絶命の危機!」が肝。ただ、さらにこの後の展開の方が気になる。当然シリーズものだから続きを描くと思うが、早く観たい!
    (上演時間1時間45分) 【Aチーム】

    ネタバレBOX

    舞台セットは、中央壁に大きな絵画、テーブルと椅子、上手にソファとクッションを置くだけのシンプルなもの。しかしクッション等の小道具を上手く笑いに取り込む。
    冒頭は「サダオシリーズ3、4」のダイジェストを観せ、本編へ上手く引き継ぐ丁寧な展開。サダオ(曽世海司サン)はゲイの恋人ジャイアンが亡くなり、意気消沈している。そんなサダオにジェンダーのブービー(栗田浩太郎サン)、性転換したマスター<ママ>(黒田由祈サン)、ギャップ<新宿界隈の仲間>(栂村年宣サン)、チョロ(川崎千尋サン)が元気づけようとする。そこに何と死んだはずのジャイアンが現れ大騒ぎになるが、実はジャイアン(下出丞一サン)の双子の弟。ここ迄は普通のドタバタコメディといった印象であった。

    しかし預かったモノ=赤ん坊(御包み)が登場し、状況は一転する。生前ジャイアンと結婚していた女性が出産と同時に亡くなる。その赤ん坊の育児問題が焦点になってくる。施設に預けるか否か、サダオとブービーはジェンダーカップルで、勿論 育児経験はない。焦り戸惑い等、右往左往する滑稽さが前半の笑いと異なってみえる。何時しか父性本能 いや母性本能らしきものが芽生え、名前(「大地」らしい←台詞から推定)を付け、育児用品を買い集める。ただ情がわく迄の過程が早過ぎる。ここは丁寧に描いて欲しかった。
    サダオの弟・コウジ(小林大斗サン)の妻も妊娠しており、同調した行動をし出す。ゲイカップルに育児ができるか否か、といった行政の役人(日替わりゲスト=安達雅哉サン)も登場させ、それなりのリアリティをみせる。

    普通の育児…男女という”異性カップル”が一般的であるが、ゲイカップルという男の同性がそれを行う。何が「普通」か といった問題の投げかけと固定観念からの解き放ち。物語は、けっして杓子定規の理屈ではなく、男・女の感性の違いを面白可笑しく描き出す。腹にクッションを詰め込み、歩き難さを実践・実感したり育児書を必死に読み込む姿が愛おしくなる。先に記した絵本「タンタンタンゴはパパふたり」(邦訳名)で、2羽の雄ペンギンが懸命に卵を温めて、という話である。公演はゲイというジェンダーカップルの設定、そこに更に生まれたばかりの赤ん坊の育児という課題を取り込み、多様な家族の在り方を観せる。時代がやっと追いついてきた感じである。

    当日パンフには、日本では まだジェンダーカップルに偏見があるが、「人と人が出会いと別れを繰り返し、それでも尚、人と人は繋がっている物語を紡ぎたい」とある。何が”普通”か分かり難いが、それでも普通を求める人がいる。同時に多様な家族形態を認めつつある社会、例えば東京の渋谷区などの「パートナーシップ制度」が成立する。
    自分が次の公演を観たいのは、ゲイカップルの子育てを通じて、”普通ではない”親子・家族の在り方をどう描くのか期待するからである。
    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2022/05/14 19:25

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大