『焔 〜おとなのおんなはどこへゆく〜』 公演情報 下北澤姉妹社 「『焔 〜おとなのおんなはどこへゆく〜』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    海外戯曲のようなハイソな作風。こういった試みを全面的に支持する。「言いたいこと全てぶち撒けてやる!」との作家の姿勢がカッコイイ。ただその統一感の無さが散漫な印象を与えてしまい、勿体無くもある。かなり真面目な問題提起を掲げており、宗教的社会主義的な蜂起の萌芽すら予感させる程。

    超高級タワマンで行われるホームパーティー。和歌を嗜む美人コンシェルジュ(関口秀美さん)が歌い踊りドリンクを運び、ユーモラスにミステリアスに話の鍵を握る。
    社会的成功者である精神科医の松岡洋子さんは、事実婚のパートナーである形成外科医・成田浬(かいり)氏の浮気を疑っている。学生時代からの友人で、松岡さんに憧れてタワマンに入居してきた明樹(あかぎ)由佳さんは週刊誌記者の夫(辻輝猛〈てるたけ〉氏)と大学生の娘(裕海さん)がいる。学生時代の後輩、美容師のみょんふぁさんはバツ4で子供が4人。

    格差社会、子供のあるなし、女性の幸福の基準、本音と建前、優越感と劣等感、じっと隠してきたものが曝け出される不思議な一夜。めらめらと立ち上る焔(ほむら)。

    松岡洋子さん明樹由佳さんみょんふぁさん、主演女優3人はそこに立っているだけで成立する熟練した存在感。何をやらせても巧い。この3人の会話劇だけでも行けた。これは作家も書き甲斐がある。

    かなり意識が高い舞台、変わっていて面白いのでお薦め。

    ネタバレBOX

    現実とリンクした話題がちょこちょこ登場。ゲス不倫をスクープした週刊文文の記者は政界を揺るがす社会的告発を狙っている。「政治家の仕事とは国民から集めた税金の使い途を決めることだ。その一番重要な事に国民は関心を示さない。興味を示すのは有名人のスキャンダルだけ。だから国民に興味を持たせる下世話なネタを暴きつつ、大事な問題へと誘導していかなければならないんだ。」
    コンシェルジュに惹かれた男が彼女にアプローチするようなハラハラネタも盛り込みつつ、作家の語り口はかなり巧妙で意図は深い所にあるようだ。

    作中、フラメンコのリズムがしばしばカスタネットで奏でられる伏線。いよいよ皆がフラメンコで踊り出す素晴らしい演出。「人生はそれ自体がそもそも法廷であり、己の全てを晒してジャッジを委ねよ」と云うラスト。「さあここからが開廷だ」。

    何故、舞台を2018年12月30日にしたのかが分からなかった。翌年の12月から武漢のコロナ騒動が話題にはなったが、まだ誰もマスクなんてしていなかった。多分何か隠された意図がある筈。

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    2022/05/13 11:27

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