衣人館 / 食物園 公演情報 牡丹茶房「衣人館 / 食物園」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    『食物園(しょくぶつえん)』

    健康保険料、厚生年金保険料、住民税etc.・・・。未納の代金の催告に現れた区の担当の男(杉本等氏)。ガンガンとドアを叩き鳴り止まぬインターフォン。大家(國枝大介氏)に鍵を開けさせ、怒鳴りながら部屋に侵入。やっと彼等が出て行くと、浴室に息を潜め隠れていたこの部屋の住人(二ツ森恵美〈めぐみ〉さん)が顔を出す。部屋には沢山の土を入れたプランター。テーブル上のIHクッキングヒーターにはスープの入った鍋。仕事を辞めて引き籠もっている彼女のもとに、兄(坂井宏充氏)や学生時代の友人(池島はる香さん)が訪ねて来る。どんどんどんどん彼女の病は悪化する一方だったが・・・。

    自分が弱者であることを自覚して、他人の迷惑にならないよう必死に息を潜めて生きてきた女。そうまでしても矢張り社会は排除の手を緩めない。口にするのはスープだけ。只々スープを啜るだけ。

    ネタバレBOX

    『家政婦は見た!』のように“シロアリ”(赤猫座ちこさん)視点の連作集になりそう。(このマンションにはキチガイしかいないのか?)

    上島竜兵氏の自殺のニュースと共に日本中にバラ撒かれた鬱。よりによってこんな日にここまでの鬱舞台を観る羽目になるとは・・・。話に流れる旋律は柳田邦男の『犠牲(サクリファイス)―わが息子の脳死の11日』に似たもの。自己否定の果ての果てに微かに手に触れたのは捻れた自己犠牲の美。誰にも理解されない生き方を選び、緑の大地と青空の真下でカラスにつつかれて死んでいくのだ。

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    2022/05/12 15:02

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