5月35日 公演情報 Pカンパニー「5月35日」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2022/04/21 (木) 14:00

    座席1階

    5月35日とは、6月4日に起きた中国の天安門事件の隠語なのだそうだ。独裁的政府がいかに住民を蹂躙するか、ウクライナへの侵攻を続ける独裁国家ロシアのことが世界中の人の頭から離れない今、天安門事件の芝居は非常に胸を打つ舞台である。

    国家は国民を守らない。守らないどころか抹殺もするし、殺害もする。民主国家になったはずの日本も関係ない話ではない。太平洋戦争当時は政府に都合の悪い情報は報道されなかったし、国家に逆らうものは非国民として断罪され、刑務所で非業の死を遂げた。戦後の日本も、政府を批判する人は排除されている。安倍元首相の演説にやじを飛ばして拘束された事件がいい例だ。
    この舞台でも、ラストに近いところで天安門被害者の父に「(命日の6月4日が過ぎるまで)旅行に行ってもらう」と公安が言い放つ場面が出てくる。為政者に都合の悪い国民には消えてもらうという発想は日本だって無縁じゃないのだ。ゼロコロナ対策で強制的に封鎖された上海を日本国民は笑えない。今回の舞台は、そうした類似性を否応なく客席に突きつけてくる。

    Pカンパニーの「罪と罰」シリーズは本当に面白い。今回、脳腫瘍で数か月の命と宣告されながら、国家に殺害された息子の命日に天安門で弔いたいという母親を演じた竹下景子、その妻に当初は振り回されながらも、最後は日付も理解できなくなった妻の代わりに決死の覚悟で天安門に向かう夫を演じた林次樹。二人の力のこもった姿は強く印象に残った。権力を振りかざす警察官で身内にいて、家族が引き裂かれていくという筋書きも非情な世界を際立たせた。

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    2022/04/21 17:53

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