からっぽう(再演) 公演情報 弾丸MAMAER「からっぽう(再演)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    妻が遺したノートの意味
    心に傷を持ちながらも、その消化を上手く出来ない夫・道喜文生に対し、夫に暴力を振るわれながらもひたむきな愛を生涯に亘って通し続けた道喜佳代子の生涯を綴った作品。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    広島出身の道喜らはピカドンによって両親、友人らを失った精神的外傷が癒されないまま、新地の長屋で夫婦生活を始めることとなった。新婚生活は何もないところから始まったが二人はそれでも幸せな日々を送っていた。
    ある日、文生は突然、会社を退職してしまう。その日を境に二人の生活は一変する。放蕩生活に明け暮れ借金までしてしまう文生に対し、佳代子は働きながら夫を支える。それでも改心しない夫と喧嘩をしながらも、佳代子の瞳は夫を見続けていたのだが・・、そのうち文生は近所の女・夏実(ヤクザな夫と死別して一人身)に誘われ不倫してしまう。
    夏実は「うちの人(死別した夫)は、たった一言でキレちゃって命を落としたの。こいのぼり(中身がからっぽう)と言われて喧嘩になって命を落としたの。」こう文生に言いながらも淋しさで薬漬けになっていた夏実。
    その薬を売っていた「BAR蠍座」のヤクザな男たち。

    そんな状況の中、文生は不倫を知った佳代子と再び喧嘩になり、更に知人と些細な事から揉めて、失踪してしまう。

    一方でツケが貯まっていた「BAR蠍座」では佳代子の身体で返済してもらうと脅し、いわば強姦のように文生の知人ら3人の男たちに辱められる。
    一時は自害しようとした佳代子はそれでも文生をこの地で待つのだった。「貴方が帰って私が居なかったら困るでしょ・」と。(号泣!)

    佳代子に特別な感情を抱いていた家主・野津の不気味な仕草やセリフがひじょうに面白い。殆どの笑いは彼が取ってた。美味しい役どころ!(^0^)

    やがて、文生は長屋に佳代子が欲しがっていたTVを抱えて帰ってくる。そして佳代子に何かを言いかけて言い出せない。その何かは何か・・?
    こうして、一年後道喜家の長男・政彦が生まれるも、佳代子はガンに侵され28歳の若さで逝ってしまう。「ねえ、文生さん。貴方はもう・・、見えない何かに苦しまないで。生まれ変わっても、また一緒になりたい・・。」
    残された文生は佳代子の骨をかじりながら号泣する。赤ん坊を抱きながら・・。

    この物語は佳代子の遺した一冊のノートによって過去の夫婦の模様が描かれ、それを観た息子・政彦と現在の年老いた文生が佳代子の心を知る、という内容でした。そしてあの当時、佳代子に何かを言いかけて言い出せなかったその何かとは、たった一言「ありがとな」だったのです。

    年老いた文生は言います「わしは本物のからっぽうだ!」
    そして「政彦、明日、わしと一緒にキャッチボールしてくれんか?今まで何もしてやれんですまんかった。」


    涙と笑いに満ち溢れ、久しぶりに号泣した芝居でした。本の作りもひじょうにいい。観客がどんな場面を欲しているか熟知した本でした。そういう意味ではどんな世代にも受け入れられ、しかもベタで解りやすく、簡単に感動出来ます。主役の3人の演技はさることながら、それぞれのキャストの持ち味も効果バツグンでまったく欠点のない公演でした。
    素晴らしい!の一言です。

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    2009/07/26 14:26

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