実演鑑賞
満足度★★★★
何とも奇妙な芝居。会議室で、物語を作ろうと、そのネタになるものを探すため、それぞれの初体験や、最悪の経験や、時空論etcを語り合う6人の男と1人の女。+仕切るサンディ(白井晃)。そうしても全然物語らしきものが出てこない。
初めてやった時の話を自慢しあうのは、女性に対するセクハラのよう。しかし最初に「ここは聖域だ。ポリティカルコレクトネスも関係ない。これを言ってはいけないのでは、とか気にする必要一切ない」というまとめ役(演出家?)のサンディの言葉のせいで、許されている。居心地悪そうにしていた紅一点サラ(高田聖子)が、自分の番になると、なぜか嬉々として暴露話を始める。男性原理に女性も進んで迎合する姿に作者は皮肉をこめたのだろうか。
大真面目に話しても、周りの期待とずれた話しかできず、自分の経験を物語化したくないと言い出す異分子(ダニーM2=チョウ・ヨンホ)は隠微な形で排除される。「妻に本当のことを言えずに、石とトウモロコシのくずを捨てた」話とか、「鶏を触れなかった話」とか、客席から聞いててもずれまくっている。
サンディは外からの指示にイライラしたり、ペコペコしたり。物語づくりも現代資本主義のもとでは決して自由ではない。マックスやら誰それやらと、名前だけ出てくる人物はスポンサーなのかプロデューサーなのか。かつて人事部からセクハラをやんわり批判されたこともあった。その当の女性は行方不明に。
物語を作ろうとして失敗する、物語批判、アンチロマンの芝居。でありながら、物語を渇望する、アンビバレントが貫かれている。笑えない話や、全然面白くない時間論などが主な話題なのに、しばしば、変なところで笑いが起きる。確かに笑える。笑いはこの芝居の持ち味でもあり、コメディとしても見ることができる。休憩なし2時間