もはやしずか 公演情報 アミューズ「もはやしずか」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    主演の橋本淳氏、た組の『在庫に限りはありますが』の妻に不倫されるハンバーグ店店主が印象深いが、今回は全く別のキャラに。自閉スペクトラム症の弟の事故をトラウマに抱え、大人になり結婚した今もずっと引きずっている。
    妊活に励むその妻、黒木華さん。この当代随一の天才女優の内面はぽっかりと口を開けた暗いがらんどうのよう(偏見)。昔『黒い家』と云う映画のキャッチコピーに使われた「この人間には心がない」の文句を思い出す。ニコニコ笑う彼女との暮らしはゾッとする。
    主人公の母親役、安達祐実さんも負けてはいない。この二人の怒鳴り合いが見てみたかった。これだけキャリアを積んでもイメージとしては若手女優。
    主人公の父親役、平原テツ氏は珍しくまともな人間像だがクライマックスで見せ場あり。
    黒木華さんの妹役、天野はなさんは見事なキャスティング。何となく同じ雰囲気を纏っている。
    上田遥さんも抜群のキャスティングで、本物か?と思った。こういうキャラをこのタイミングで放り込むセンスが図抜けている。
    個人的MVPは藤谷理子さん、児童発達支援センター、療育園(?)の研究生。菅野美穂のモノマネをする高田紗千子(梅小鉢)に喋り方がそっくり。人をムカつかせる天才で、クライマックスの安達祐実さんとのバトルは語り草。このシーンだけでも観る価値充分。かなりこの役に手応えがあったのでは?

    作者はピンボールのように跳ね回る女性の感情の描き方が絶品。一度感情のスイッチが入ると全く論理的な会話にならず、無駄な遣り取りが途方に暮れる程延々と続く。周囲の女性の嫌な面を逐一メモっているかのような人間観察。

    かなり面白い脚本。
    子供時代、障害児の弟の事故がトラウマになっている主人公。妊娠した妻が出生前診断で障害児の確率50%と聞かされる。動揺し困惑しどうにか妻を説得しようとするが・・・。

    ネタバレBOX

    藤谷理子さんVS安達祐実さん&平原テツ氏のバトルが最高。子供を事故で失った遺族の家を訪ねてきて、遺族の心のケアの会へ勧誘。その無神経な物言いにブチ切れた二人、平原氏は彼女を包丁でぶっ殺そうとする。ストレスから異物を口にするようになった橋本淳氏は、その修羅場に我関せずでスティック糊をパクパク食べる。この青い糊がういろうみたいで美味しそう。

    ここから時間は飛んで、離婚して一人暮らしになった橋本淳氏がデリヘルを呼んでいる。そこにいきなり押し掛けるのは別れた妻と自分の両親。左肩に薔薇のTATTOOの務所帰りのデリヘル嬢。逃げられない状況。一体何の話なのか判りゃしないギャグ。観客大受け。

    産まれた子供に障害がなかったことから、今更よりを戻そうとする黒木華さん。スマホの赤ちゃんの写真を見せようと。
    泣きながら弟の事故死のトラウマを吐露し、自分に子供を育てていく自信がないことを言葉を尽くして伝えようとする橋本淳氏。「いつまでも過去に拘っていては・・・」と両親は復縁を後押し。多分この流れに押し切られて行くんだなあ、と観客は思う。そこにベランダの窓と対面の壁の上部から滴り落ちる大量の血。これは幻影なのか、それとも暗示なのだろうか?

    ラストの話のまとめ方に逡巡したような停滞。何か違う。デリヘル嬢の上田遥さんも同席していた方が良かった。そして彼女に最終的なジャッジが委ねられるような。

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    2022/04/10 20:38

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