実演鑑賞
満足度★★★
舞台美術が見事、しみじみと見てしまう。市川崑映画のように小道具から凝りに凝りまくっている。音響もかなり練られていて雨漏りの音からぐっと来る。戦後まもなくの時代の雰囲気を巧く表現。
舞台は教員室、GHQ主導による教職追放が行なわれ、軍国主義思想を持つとされた教師達は排斥に。そこに現れたGHQの女性、戦時中のこの学校の教育がどのようなものだったか、教師一人ひとりに己の責任を追求していく。
御真影(昭和天皇の肖像写真)。
奉安殿(御真影や教育勅語を安置する為に学校に置かれた社のようなもの)。
千代延(ちよのぶ)憲治氏 グアム島からの帰還兵の教師。骨の髄までガチガチの帝国軍人。
鈴木浩之氏 怪優伊藤雄之助っぽい前教頭、職を奪われることに。戦時中から天皇崇拝の教育に批判的だった。
松山尚子(ひさこ)さん 敗戦後、すぐ米軍に寝返って愛人になった女教師。
足立学(がく)氏 新教頭であり、松笠(マッカーサー)なんて名前のギャグも。
紗織さん 善人っぽい若い女教師。
蜂谷英昭氏 若い女教師の婚約者。
永井博章氏 亀田親父似の大工。英語ペラペラで有能。
家納ジュンコさん 日本人ながらアメリカ人の養女になったGHQの教育改革の責任者の一人。
前半はどれだけ歪んだ教育で子供達を洗脳してきたかを突き付けていく。生徒達から調査収集した声が教師の罪を糾弾する緊迫感。糾弾された紗織さんのエピソードが素晴らしい。千代延憲治氏が逆に米国の教育の罪を糾弾するシーンにも観客は固唾を呑んだ。
後半は探偵物調にシフトチェンジ。語られるテーマは重い。
崇拝する錦の御旗が“天皇”から“民主主義”になっただけで、権力と同調圧力に屈することには何の変わりもないのだ。