実演鑑賞
満足度★★★★
「親の顔」でお馴染み?のユニットによる常小屋でのチェーホフ。「かもめ」はストーリーも知っており既視感もあるが観たという記録がなく、もしや初めてかも知れぬ(大幅翻案したものは観ている)。
とは言ってもやはり古典作品である本作、「比較」しつつの鑑賞となる。ただし対象は自分の中のイメージ(記憶も自分のアレンジが入ったイメージという事になるが)。名作の「再現」にとどまらず十分に咀嚼し手を加えた痕跡がそこここにあり、「味付け」という語を用いるなら創作料理に近い独自な仕上がりと感知させながら、原作からは決して外れていない「飲み込める」演出であった。
会場であるプラザソルは劇世界を作るのにちょうど良くない劇場という印象が強くあったのだが(実際この舞台でも上下のはけまでの距離が若干難点ではあったが)それを忘れる程役者の作る「場」の緊迫感に釘付けになっていた。
だがひねくれ者の私は、人物個々の感情=人間の状態の掘り下げ、そして大胆な具現においてここまで肉薄し、二時間を疾走した舞台にしては・・と思う。後を引く余韻が手からこぼれて薄らぐ理由は何かと考えるのだ。
舞台の快楽は十二分に味わい文句は無いが、この感覚は何かと考えている自分が居る。今は言葉にならないが。