ながいながいアマビエのはなし 公演情報 劇団 枕返し「ながいながいアマビエのはなし」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

     板奥に黒布で仕切った袖、そのセンターに矢張り黒い衝立様の仕切りを設け、左右から袖へ入れる通路を設けてある。出演者は客席側通路から登場。因みに黒布から奥は森という設定である。板手前下手に箱馬2つ、上手に丸椅子2脚と至ってシンプルな舞台だ。

    ネタバレBOX


     アマビエとは、幕末現在の熊本に現れ、今後6年間は豊作が続くがその後疫病が流行る、その時には自分の似顔絵を用いて云々との予言を残したとされる妖怪のことで1858年頃から大流行した疫病・虎狼痢(コレラのことだ、“ころり”と読む)もあり明治以降も度々話題になったとされる。
     今作は、無論Covid-19というパンデミックに対するヒトの無力を背景に、それに輪を掛けたような非科学的な対応しか出来なかった我らが為政者の無能のツケを支払わされている庶民の、鬱屈した感情や同調圧力への不満をぶつけられた所謂負け組が一念発起、ラストチャンスを掛けて参加した‟人生大逆転ツアー“だった、が。
     ことほど左様に人生の歯車が簡単に逆転するハズも無いことは、為政者の無能は我らの責任にあると考えることのできる市民を育てることができなかった我ら自身の問題であることに気付くことが出来ない我ら自身にある。ラストシーンで行方不明者が出るのだが、誰も明確に誰が行方不明になったか? 他に何か居たようだったがそれが何だったか? を思い出せない。この点こそ、総ての問題点の本質を看過し、世界が己に関わり、己は密接に世界に内包されつつ、そのことを認識する一点に於いて世界を己に内包することができる可能性を見出すという人間存在の根源を意識できていないことを表して居よう。この点を意識できれば、今作、格段に良くなる。それが出来て居ない点こそ今作が他人の魂を深く揺する所迄到達できていない理由である。作家は、世界に己を通らせた上で作品を紡がねばなるまい。今後に期待、深く人間を研究して欲しい。

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    2022/04/02 15:40

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