実演鑑賞
満足度★★★★★
「珠子が居なくなった」…可笑しみの中に、じわっとくる温かみ 滋味ある好公演。お薦め。
前作「風吹く街の短篇集(第五章)」の「朝、私は寝るよ」は55分、二人芝居で素晴らしかったが、この公演は少し時間軸を長くして、家族の物語を紡ぐ。
常識という概念からズレているような主人公・珠子の思考や行動、それに振り回される周囲の人々の可笑しみ。表層的にはシニカルな感じもするが、ラスト 父との会話によって滋味溢れる物語へ変転させる上手さ。珠子も その家族もどことなく変な人達だが、全否定できない微妙な感覚のズレを見事に表している。少し変わっている家族に対し、珠子の夫を常識人(対比)として描くことによって、一層変なズレを際立たせる。家族であるが、家族になりきれない夫の歯がゆさ、苛立ちは観客の共感を得るところ。しかし家族には家族にしか分かり合えない絆・繋がり、そして歴史がある。それがラストシーンに…。
(上演時間1時間35分)