彷徨いピエログリフ 公演情報 9-States「彷徨いピエログリフ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    観応え十分。お薦め。
    自分に引き寄せず、公演の世界観にどっぷり浸りたい。しかし正義とは何か や情報配信等の要の問題については、自分で考えることが大切。それは終盤の違和感、もしかしたら観客に委ねた結果のようにも思えるから…。

    ネットニュース配信を行っている、大手出版社の子会社が舞台。新人記者の成長を通して描いた「誰のためなのか、正義の情報」とは何なのか、多角的視点で捉えた骨太作品。よく言われる 真実は一つではないが、事実は一つ。物語は、多くの主観や客観(事件)を通して、伝える上で大事にしたいことを浮かび上がらせる巧みな構成。また関係ないような描写が、実にさり気なく挿入され、成長する姿を映し出す。

    子会社でネットニュース配信会社という設定の妙、さらにサスペンスミステリーといった描き方が観客の興味を惹きつける。ただ先にも記したが、終盤はそれまでの「理」の世界が「暴」へ一転する、その荒い展開が少し勿体なかった。
    (上演時間1時間50分) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は編集部内、真ん中に大きなテーブルと椅子、周りに3か所作業スペース。そのオフィスを白枠(飾り棚のよう)で囲み、スタイリッシュな雰囲気を漂わす。上手・下手に別スペースを設え、外の世界とも地続きを表現。

    冒頭、主人公・杉野くるみ(松木わかはサン)が、編集長・四天王寺正志(小池首領サン)にSDG’sを思わせる環境問題(汚染処理)に係る記事配信を申し出たが、却下。時勢に合ったテーマのように思われるが、後々、この街に住んでいる親子が編集部に現れ説明する。街で暮らしていく上で必要な施設。住民にとって暮らしを支える存在である。くるみと親子、どちらも真実であろう。鳥のように空を舞い、(大局的)なところから見ても、地を這う虫(現地)が見えないこともある。その土地ならではの問題と全国的な視点/捉え方では異なる(原発も同様)。

    一方、15年前の轢逃げ事故に関する訂正記事を求めて、1人の青年が編集部へ。警察官が飲酒運転で事故死させたもの。記事を書いたのが、まだ出版社にいた頃の編集長。この記事によって飲酒運転の減少にも繋がる社会的な反響大。物語の本筋はこちら。
    先輩から取材方法や資料のまとめといった、一見雑用に思えることを押し付けられるが、そのことが書く(配信する)上で大切なことが解ってくる。物語は くるみの記者としての成長を通して、主観的な考え、客観的な物事の捉え方を巧みに観せる。

    先の汚水問題は脇筋で、くるみの取材不足、資料の読み込み不足(自分でも、まとめるのが遅いとぼやく)といったことをさり気無く描き、本筋へ巧く誘導する。脇筋を深追いすると話が散漫になり、描きたい事が暈ける。構成はサスペンス/ミステリィーの様相を成しており、15年前の記事の訂正を巡って、加害者・被害者の真実と事実の解明といった展開に興味を惹かせる。ちなみに記事は「~らしい」といった伝聞で、責任追及されないような逃げ道を用意している。そこに出版社という紙媒体と配信という微妙な違いを表す。

    終盤は、くるみが編集長と互角に議論出来るまでに成長した姿を観せる。しかし、ラストの「理屈」ではなく狂気の沙汰といった、破壊するような展開に違和感を覚えるのだが…。敢えて理屈的なことはまとめず、観客に委ねたのだろうか。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/03/27 00:09

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