石を投げる女がいて 公演情報 ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン「石を投げる女がいて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    観応え十分、お薦め。
    物語はストーンハウスという場所を中心に、そこで働く(中心)人物が次々に変わり不安・不穏をおびて展開していく。足(許)を掬われる得体の知れないもの、それは噂・憶測・中傷といった実態がつかめない不気味さをもって描く。
    都・邑、企業的(組織)か家族的(仲間)といった違いを背景に、人の情実を上手く絡めて物語の中へグイグイと引き込んでいく。本公演の魅力は脚本の 力が凄いところ。
    (上演時間2時間30分 途中休憩なし)
    【GR<グランドロマン>チーム】

    ネタバレBOX

    舞台美術は手前と奥、そこに橋が架かるよう行き来できる路。所々に木々があり森の中を連想させる。後景は黒幕、時々開閉することによって、別の場所ーパワースポットの存在を表す。上手・下手にも別の場所があり、物語の進行を促すシーンを挿入する。上手は、ストーンハウスを盗撮する男。下手は村人の語らい場。

    森の中にあるロッジ、一時は賑わっていたがオーナーが亡くなり現在は使用していない。オーナーの娘・みずほ(石井澄代サン)が大学時代の友人・薫(天笠有紀サン)に貸し、薫が数人の仲間(全て女性)とストーンハウスを立ち上げた。顧客のニーズに添った商品作りをしていたが、経営は伸びず、大阪のアクセサリーショップと経営提携する。しかし市場・競争原理を強行され、薫ほか創業メンバーが退職に追い込まれる。残ったメンバー(第一次加入組)の美月(糸原舞サン)が逆にショップの詐欺まがい商売を糾弾する。が、この地のパワースポットを利用し、第二次加入組の音(上村愛サン)を中心に、石に神がかり的な力を備え商売を始めた。本当にそんな力があるのか疑心暗鬼な美月は経営能力・部下からの不信で失脚。
    一方、暴力を振るう恋人から逃げてきた女、遭難しかけた男がストーンハウスのメンバーと思惑などが絡み、人間関係の歪さを増幅させる。さらに村人達からは怪しい集団と見做され、迫害を受け出す。八方塞がりのストーンハウスの行方は…。

    戦国時代の下剋上を思わせる様相。そこは現代版として、ちょっとした行き違いや誤解が大事(おおごと)になることで説明。勿論、悪意を込めた作為も潜む。同時に、表面的には逆観点が想像出来ない巧みさ。例えば、美月が みずほ に懐妊祝いとしてストーンアクセサリーをプレゼントしたが、流産した途端、この”石”のせいだと豹変する。人の感情の揺れ、そこを微妙な設定で鋭く突く面白さ。

    終盤、村人・逃げ込んだ女の恋人などがストーンハウスのメンバーに詰め寄る場面は、双方の主張が際立ち、今までの もやもやした思いが整理されていく。人々の感情を理路整然と説明するのではなく、状況や情況を通して食い違いが解ってくる。それでも、家族にしてみれば胡散臭い商売、もっと言えば新興宗教に嵌ったのではと不安になる。ストーンハウスという仲間、その中での対立、さらに地域(村人)や家族といった部外者を巻き込んで実態が掴めない”何か”を実に上手く表現した、一種の心理劇のようだ。
    公演の心象付けは音響ーー上演前は鳥の囀り、微風や強風が 和らぎや緊張として風景に溶け込む。もともと都会生活、競争社会とは違う環境を求めたのに、やはり人間関係に翻弄される。興味深い内容であった。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2022/03/25 22:12

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大