赤き方舟 公演情報 風雷紡「赤き方舟」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    観応え十分。上演時間こそ、この劇団にしては短い方だが、内容的には力作。
    芝居屋風雷紡らしく歴史的事件を通して現代にも通じる問題、その理不尽を骨太に描いた作品。物語は連合赤軍の事件ー山岳ベースを外観に装いつつ、底流には不平等、特に女性蔑視を中心に鋭く指摘・糾弾する。弾丸は重く深刻、だからこそ観ている者のハートを射抜くのである。

    さて、公演の外観を成す連合赤軍のことは、生半可な知識では書けないが、描きたかった芯の部分は十分伝わる。同調しなければ生き残れなかった同志・仲間、しかし 本当は他人がどうであろうと自分で考え行動する信念がなければ、いつの時代も生きられない、と思わせる。
    因みに映画「実録 連合赤軍あさま山荘への道程」(若松孝二監督)は、3時間を超えるが概要は分かるかも…。
    (上演時間1時間15分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、ほぼ素舞台。後方に暗幕があるだけで、演説時に箱馬が置かれる。また劇場の中央にある柱に布幕・縄が巻かれ山岳イメージと国外ーパレスチナという地理的違いを演出する。全体的に薄暗く、重苦しい雰囲気が漂い、観客に緊張感を強いる。

    タイトル「赤き方舟」から「ノアの方舟」を連想するのは容易であろう。方舟には全ての番(つがい)を乗せること。その「全て」に平等性があるのだと言う。
    物語は連合赤軍の足跡(そくせき)を描いているが、芯は(女性)差別を強調しており、冒頭から問題提示する。重信房子(前澤里紅サン)が生まれたときに父は女の子でガッカリした。後々分かるが、重信、遠山美枝子(吉水雪乃サン)、永田洋子(増田さくらサン)はヒジャブ(中東諸国の宗教的意味合いは別)を覆い登場する。また雑誌「an・an」を持ち、ファッションに関心があること、化粧をすること、長い髪などが、殊更 女性を表すと批判される。男性だけではなく、遠山美枝子は同志で同性である永田洋子からも嫉妬・虐め・暴力を受けることになる。それが山岳事件-総括シーンとして描かれる。その前段で永田洋子は奇麗ではないーお姫様ごっこの遊びに入れてもらえなかった悔しさ。連合赤軍の活動においても お茶汲み、雑用といった差別を描き、今の時代にも蔓延る不平等をしっかり語らせる。

    山岳ベースでの残虐さ・・同調圧力によって理不尽な行為を誰も止めることが出来なくなる。歪んだ理屈が人を支配する怖さ。それは半世紀前の連合赤軍事件当時よりも現代の方が怖いかも知れない。インターネットを通し同志・仲間でもない見ず知らずの人々からバッシングされる風評・中傷の方が遥かに恐怖。例えばコロナ禍にあったこと等。

    不平等・理不尽なこと、今の世の中で当たり前と思っていることが、将来の人々からどう思われるのか。1970年代ー70年安保闘争、ベトナム反戦、さらに全共闘の「東大安田講堂事件」など学生運動が盛んでテロ・ゲリラへ転戦した。現代から見た当時と同様、将来(例えば50年後)の人から見た2022年はどう見えるのだろう。「世界を変えたいと思っていた」ことは、真に正しい行動であったのか。その命題を現代人の喉元に突き付けた、と思う。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/03/23 14:30

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