OM-2×柴田恵美×bug-depayse『椅子に座る』 公演情報 OM-2「OM-2×柴田恵美×bug-depayse『椅子に座る』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    当日パンフが小冊子の教材となっており、OM―2(旧名・黄色舞伎團2〈おうしょくまいぎだんツー〉)、真壁茂夫氏による宮沢賢治論が展開される。NHKのドキュメンタリー『宮沢賢治 銀河への旅 ~慟哭の愛と祈り~』で提示された宮沢賢治同性愛者説。盛岡高等農林学校(現・岩手大学農学部)で1学年下の保阪嘉内(かない)と出逢い、叶わぬ恋に終生身を焦がした、とする。今作はこの観点から宮沢賢治(佐々木敦氏)と保阪嘉内(野澤健氏)の内宇宙を、『銀河鉄道の夜』や『風の又三郎』をまぶしながら舞踏朗読映像演劇で表現。無限の想像力とアイディアが駆使され、気の狂わんばかりの湧き上がる激情がステージ上から客席へとどくどく溢れ落ちていく。宮沢賢治論として一見の価値有り。

    物凄く健康的な前衛アングラ、柴田恵美さん率いるコンテンポラリー・ダンスは若き女性達による正統派暗黒舞踏。何度も倒れ起き上がる動作を繰り返し、肘や膝を痛めないのか心配になる程。クンダリーニ・ヨーガの修行や五体投地を彷彿とさせる。オープニングの鉄道列車の走行音にストンプを合わせていくダンスに高揚。オノマトペをヒューマンビートボックス風に組み合わせた曲も面白い。一切、宮沢賢治と関係ないのだが一番印象に残った。一度、曲なし舞踏オンリーで観てみたい。
    なかなか得難い体験が出来るので是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    佐々木敦氏は全身を使って生命から宮沢賢治の詩を絞り出していく。(表情が永田裕志に似ているような)。舞台上部に字幕が投影され、頭上からは無数の小さなスーパーボールや紙吹雪が降り注ぐ。床に置いたトランクからは侏儒の野澤健氏がひょっこり顔を出す。寺山修司や唐十郎の世界。

    自分は宮沢賢治が同性愛者だとは思わないが、そう仮定して解釈すると非常に面白くなることは事実。

    寺山修司の『観客席』は観客と役者の垣根を何とか破壊しようとする試みだった。安全な位置から虚構(見世物)を眺めていた筈の者達に自分と云う役を演じているのだと自覚させる為に。今作のラストは場内が明るくなる中、演者達は灯りの消されたステージ上で椅子に座り、帰っていく観客達を観賞しているもの。伝説のハリウッドのギミック映画王、ウィリアム・キャッスルのようにあの手この手で垣根を崩壊させて欲しい。

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    2022/03/19 14:17

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