実演鑑賞
満足度★★★
第一幕75分休憩15分第二幕60分。
新藤兼人は殆ど観た記憶がない。多分何本か観ている筈。この遺作も知らなかったが観劇後やたら観てみたくなった。
昭和19年、奈良県天理教本部、召集された100名の部隊は上官のくじ引きにより次の赴任先が振り分けられた。松山啓太(中西陽介氏)は二段ベッドで一緒だった森川定造(田德真尚〈まなぶ〉氏)から一枚のハガキを渡される。それは愛する妻からのハガキ。フィリピンに派遣される定造は戦死を覚悟し、自分の代わりに妻へのメッセージを託す。
ヒロインの服部幸子(ゆきこ)さんが魅力に溢れている。観客全員、戦争未亡人の彼女に深く恋する筈。彼女の掴めそうで掴めないキャラクターが今作の核。クライマックス、主人公との軽妙な遣り取りが向かう先に絶句することだろう。誰にも予想がつかない。彼女のリアルな手触りの人生が全てで、反戦思想とかの押し付けがましい説教ものではない。後半のノリに何となく木下恵介の『お嬢さん乾杯!』を連想したが、実はその脚本も新藤兼人だった。
有田神楽団の和太鼓のパフォーマンスと八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の神楽は必見。本当に吃驚する程、見応えがある。宮島岳史(たけし)氏の奮闘にリスペクト。